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南阿波・海部。
ここにはおせっかいな観光施設の代わりに、
湿潤な海部山系から流れ出すミネラルをたっぷり含んだ川が
ダムに遮られることもなく、
人々のくらしに寄り添いながら黒潮洗う海岸線に注いでいます。
その白眉は南阿波サンライン。
日和佐から古牟岐に至る無人の「崖っぷち海岸」に
魚のゆりかご、照葉樹の森が繁っています。
照葉樹林の踏み跡をたどると
自分だけのプライベートビーチに出られる楽しみもあります。
観光バスがほとんど通らず、南紀白浜のように人で混雑することもなく、
挑戦者を静かに迎えてくれる唯一無二の野外活動の道場です。
提供者のお膳立てをなぞる観光ではなく、
自分が旅の主人公。
楽しいことばかりではなく、苦しいことも切ないこともあるでしょう。
そんな室戸阿南海岸を舞台に、
シーカヤック、トレイルラン、ロードバイク、ボルダリング、
サーフィンはいかがでしょうか。
10メートルの海底に手が届きそうな感覚を覚えながら
水面50センチの視点から眺めるシーカヤック。
奇岩、洞窟、島めぐり…。
海岸線を曲がるたびに新しい景色が展開し、
水の上の旅人は飽きることがありません。
水床湾一帯は
点在する島々に珊瑚と熱帯魚を陸のすぐ近くでふれあえる場所。
夏ならカヤックから海に飛び込むことで
水との一体感を感じられます。
牟岐や海部、宍喰地区でのダイビングは地元漁協の協力のもと、
ローカルルールを守りながらの快適な海底散歩。
専門的にいえば、この辺りの海は生物の多様性がウリです。
四国有数(=全国有数)の清冽な水をたたえた
野根川上流の支流冷谷(ひやだに)には
まぼろしの冷滝(ひやだき)があり、
真夏でも体温を失いながらの遡行がたまらなく快感です。
同じ清流でも野根川より開けた海部川には、
のどかな蛇行と空の色を映した無垢の水に癒されます。
漁港のまちなみや轟の滝、
こだわりの食材を提供する中流の民宿で舌鼓を打つ
自転車周遊コースを設定しました。
海部川支流の母川は湧き水を集めた小さな川です。
川底は砂地で水草が茂り、たくさんのナマズが棲んでいます。
そして天然記念物のオオウナギの生息場所。
この小さな小川を無防備なビーチマットで
ただただ漂流するというプランを設定しました。
平地をおだやかに流れるこの川はわずか数百メートルの間に、
水車と水草、竹林、蛇行、
せりわり岩とここだけの魅力を散りばめています。
人間は上を向いて空を眺めながら流れに身を任せてみる。
体力は要らないけれど、
裸の感性で水をしなやかに受け止めるって結構新鮮でしょう。
蛍の季節には夜の漂流もありえるのでは?というプランもあります。
日和佐川の源流(分水嶺の峠)から大浜海岸まで
フツウの自転車(いわゆるママチャリ)で下るコースを設定してみました。
日和佐川の源流から海までは約20キロですが、
絶壁の渓谷を過ぎると、のどかな田園の流れ。
そして神秘な淵、地元の人しか知らない避暑地、
絵本作家の梅田俊作さんが「くじら岩」と名付けた
観光パンフレットに載っていない知られざる絶景ポイントです
(場所はお教えしません。地元のガイドにお尋ねください)。
ここには小さな滝があり、勇気のある子どもしかよじ登れない、
飛び込めない巨岩があります。
それは、くじらの大きな背中のようでもあり、
クリームを浮かべたソーダの色彩感のようでもあり。
下流は浅瀬になっていて、まさに自然が設計した庭園になっています。
案内板がなく、道からも見えないのもいいですね。
昼寝をしたくなるような小さな潜水橋を通り過ぎ、
テナガエビの棲む日和佐川を下る自転車旅行の合間に
どれだけの物語をつくることができるかは、
あなたの洞察力と感性にかかっています。
MTBのような道具を使わず「ママチャリ」なのは、
気取りたくないからと前傾姿勢を取らないため風景が良く見えるから
(お尻が痛くないからという声も)。
とにかく冒険をさりげなく味わえるお仕着せではないあなたの旅です。
海部を楽しむにはおせっかいの施設は要らないのですが、
このママチャリのように片道だけのルートには
人と自転車(荷物)の送迎が欠かせません。
それには野外活動をサポートする事業所、人や荷物を運ぶタクシー、
場合によってはデマンドバスなど官民協働のソフトの整備が必要です。
自然と格闘し自然と向き合う(=己と向き合うこと)挑戦者たちを
あたたかく包み込む気配りのあるソフトを
どう構築していけるかが海部の課題です。
今回は限られた時間と人材と費用の関係で
那賀川流域を十分に掘り起こすことはできませんでした。
それでも、巨樹、トレッキング、カヌーなど那賀川とその支流、
源流の山域の魅力をたっぷりと味わえるコースを設定してみました。
ダムのなかった昭和40年代頃までは、
木頭で大きな川マス(おそらくサツキマス)が釣れたとのことです
(もし、この川が人の手のかかる前の姿に戻れたら想像を絶する野外活動の道場となっていたでしょう)。
もうやめようと何度も思いました。
身体の限界を感じながら、
あと一歩、 あと少しと歯を食いしばり、
ぼろぼろになりながらもやり遂げたこと。
海、山、川から勇気をもらい、
「また明日から生きていける!」。
今回ご紹介したコースガイドはpdfでダウンロードできます。
「南阿波アウトドア道場」ダウンロードサイトへ
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