南四国・海部川の時間…南四国の清流海部川を美しい写真と文章で紹介します。ぜひ訪れて地元の人たちに溶け込んでみては?
(2006年5月7日「海部川2006追加更新)

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 南四国の海岸線を弓なりにたどると、室戸岬に着く。

 室戸岬は、陸が深海に張り出した場所にある。そのため、太平洋の回遊魚が接近する。沖合に鯨が出現し、波止でヒラマサが釣れることもある。

 岬は、南を指した羅針盤のようである。均整のとれた二等辺三角形のそびらで西北の風をやわらげ、日の出を東半分で受ける。

 室戸岬は弘法大師が開いた。大師が洞穴内で虚空蔵求聞持法という密教の修行中に明けの明星が飛び込んできて、行が成就したと伝えられる。この修行は、虚空蔵菩薩に帰依するという意味のサンスクリット語(真言)を百万回唱えるもので、広大無辺の智慧を授かるという。

 岬へと南下する一本の国道の左手には遮るものない太平洋、右手には山がすぐそばまで迫る。岩礁のオブジェを快適にすり抜けていくこの道も、時化になれば波をかぶる。そんな道さえなかった千二百年の昔、魑魅魍魎に悩まされながら険しい稜線を伝い、ようやくたどり着いた。そして金星が舞った。

 室戸は、空と海をめざす路である。

 波は何度も押し寄せてきて岩を洗う。そして飛沫をあげて泡立つ。けれど、岩に当たって砕ける波こそが、岩をも砕くことができる。
3D描画はカシミール使用

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