幻のくじら岩とひそやかな潜水橋 くじら岩は、自然がつくりだした大小いくつもの淵、それをつなぐ流れ、まんなかにどかんと座った大岩、そこへ流れ出す借景のような小粋な滝をひとつの画面に絶妙のバランスで置いた自然のオブジェである。しかも森にさえぎられて道路から見えないところにあるので、自然が贅を尽くしたこの庭園を地元のカワガキ以外にはほとんど知られていない。 くじら岩へ登るのなら、荷物を持たずにロッククライミングの身体さばきが必要だ。 続いて日和佐川でとっておきの潜水橋へと村山さんが案内してくれた。 地元のぼくでも知らない風景を東京の人間が知っているはずがないと思ったが、彼もこの川へ通う時間は相当長い。黙って付いていくと、最初はうっかり通り過ぎたが、やがて五万分の一地図にも載っていない小さな潜水橋が道路から降りたところに現れた。おっ、いいじゃないか。 石をめくるとテナガエビがいた。さっそく食べようと口に運ぶ真似をする(川の魚介の生食はやめておいたほうがいい)。ぼくはここを「ひそやかな潜水橋」と名付けた。こじんまりとしていて風情がある。風と水面を感じる静かな時間を楽しむ。 静かな日和佐川だが、夏になれば、「くじら岩」も「ひそやかな潜水橋」も地元の子どもで相当賑わう。 ▲戻る |
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