三木睦子会長のあいさつと大会宣言

8月3日 午前10時
       明かりの消えたステージから紡ぎだされる音・・・
      そして青に浮かび上がる文字
           「吉野川のほとりへようこそ」

              ピアノは河野康弘さん
           「組曲四万十川」などの作品を発表
          上流の本山町から下流の徳島市まで
         吉野川ピアノ紀行コンサートを10月に予定

       演奏とともに 大きく映し出されたのは
    吉野川を撮り続けている徳島市在住の写真家 荒井賢二さんの作品
      苔むした源流から河口までを綴ったそれぞれに
        川の息づかい いのちのたゆたいが揺らいでいる

           ピアノは映像に寄り添う即興となり
           ときに玉を転がすような瀬となり
           ときにためらいの淵となり
           音が紡がれていく

         水郷水都全国会議 徳島大会 今はじまる


        第12回水郷水都全国会議大会・徳島大会宣言

 河川と私たちとの関係が見直される時代です。21世紀の豊かな水循環系の確保に向けて、新しい論議と実践が切に求められています。最近の河川審議会答申や、建設省のダム事業評価の試行など,既に新たな動きが現れています。また,各地の住民も河川環境整備で対案を提起するなど、運動の姿を大きく発展させています。日本の水環境の未来に対する国民的な論議と合意の条件は整いつつあります。

 第12回水郷水都全国会議は8月2日〜4日、徳島市を会場に開催されました。河川行政の転換に向けて住民が積極的な力を発揮している徳島に、各地の住民をはじめ,研究者および河川行政の当事者など、全国から800 人余りが参加しました。吉野川や那賀川など4コースのエクスカーションは、良好な水環境の保全とそれを維持するシステムのあり方を体感する機会となりました。

 6分科会場ではテーマ毎に率直な議論が交わされ,水環境をめぐる成熟した論議の可能性が示されました。また全体会議では、哲学者の梅原猛氏,アメリカの南フロリダ水管理公社のニコラスG・オーメン氏の講演があり,現代に求められている広く,深い視座が提示されました。そして吉野川河川敷での交流会では、運動を担う者の連帯がさらに広がりました。

 水郷水都全国会議・徳島大会では、21世紀型の水環境整備の理念と方策,その執行システムなどの新たな論点が深められました。河川行政に関する情報公開や決定過程への住民参加はまさに実現途上にあります。また各地の優れた模索の交流で,既に始まっている流域の未来形が部分的に示され,さらに日本全体の進路も見え始めています。川や水の論議を通じて,今日の生活スタイルや社会システムを再点検すべきこと
も共通理解となりました。

 この大会では多くの成果が生まれました。水郷水都会議の蓄積が活かされ,さらに新たな共通財産が形成されています。大会論議の一部は直ちに具体化され,あるいは将来構想の枠組みとなるでしょう。社会的なシステムの転換と共に,河川と私たちとの営みを変革することも求められています。新しい時代を開くために,論議と実践をいっそう広げましょう。


1996年8月4日 水郷水都全国会議徳島大会参加者一同

 

(開会式)
「吉野川のほとりへようこそ」。
 徳島大会は、ピアニスト河野康弘さんの演奏で始まりました。河野さんは、吉野川上流の本山町から、下流の徳島市まで、吉野川ピアノ紀行コンサートを10月に予定。「組曲四万十川」など、川にゆかりのある作品を発表されています。演奏とともに、大きく映し出されたのは、吉野川を撮り続けている徳島市在住の写真家、荒井賢二さんの作品です。苔むした源流から河口までを綴った一枚一枚に、川の息づかい、いのちののたゆたう表情が揺らいでいます。ピアノは映像に合わせて即興となり、ピアノはときに、玉を転がすような瀬となり、ためらいの淵となり、音が紡がれていきました。


石井愃義 徳島大会代表幹事の開会宣言

 おはようございます。猛暑の中,第12回水郷水都全国会議徳島大会にご参加いただきましてありがとうございました。心から歓迎の意を示したいと思います。徳島県は那賀川、それから吉野川という二つの川に今、全国の川の問題を象徴するような複数の問題を抱え込んでおります。この大会で、皆さんの話し合いを通して,よりよい解決の道が探れたらと思っておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、第12回水郷水都全国会議徳島大会を開きます。


三木睦子 徳島大会会長のごあいさつ

 お暑い中をこうして大勢でおいでいただきまして,本当にありがとうございます。私はその任にはないとは思いながら,水郷水都の会が徳島で開かれるということで、これは大変なことだ,私のような者でもお役に立つことができればと思って会長を引き受けました。できるだけ大勢の方に考えていただいて,私どもの徳島の水利に対していい方向で解決できればと思います。
 そのためには、お役所の方も、企業の方も,そして水の便を受けている人,水に対して頼って生きていかなければならない人たちみんなが寄って考え,勉強し、そのうえでよい水の恩恵を被ることができればと思っております。
 ことを急いではいけないとは思いますけれども,できるだけ良い方向で解決できればと思います。お暑い中ではございますけれども,こういう時こそ私どもの知恵を結集しなければいけないのではないでしょうか。どうか、くれぐれもよろしくお願いいたします。


木原啓吉 水郷水都全国会議委員長のごあいさつ
 
 各地で水環境の再生・創造に取り組んでいる皆様が、全国からお集まり下さいまして誠にありがとうございました。この暑い時に、お互いの問題点を話し合おうと集まられたわけです。主催者の一人として心から感謝を申し上げます。また、昨年から献身的な努力をして下さった徳島の実行委員会の皆様方,地元のさまざまな団体のご協力にも深く感謝いたします。
 水郷水都全国会議は、1984年に滋賀県大津市で開かれた第1回世界湖沼環境会議が下地になりました。この会議は世界各地の水問題について、研究者と行政の関係者,そして,住民運動の方々が集まりまして,世界の湖沼問題の解決方法を見つけようと話しあいました。それに,国内各地の住民運動の参加者が加わりました。その大会宣言(琵琶湖宣言)では次のようにうたわれております。 「湖沼はいわば文明の症状を写す鏡である。われわれは、未来の人類のために湖沼を健全な状態に保つ必要がある」。そして,行政,研究者、住民のあり方について,「住民は湖沼とその周辺の環境悪化の進行を防止するための対策の樹立が緊急に必要であることを認識すること」「住民は、環境に対する認識を高め,より多くの住民が意思決定と監視に参加できるよう情報の伝達につとめ,個人および地域社会による行動をすすめるため,自発的な組織づくりを進めること」でした。この琵琶湖宣言の決議に従いまして,この国内各地から参加した人々が,この水郷水都全国会議を結成したわけであります。
 そして翌年、第1回大会が島根県の松江市で開かれました。まさに宍道湖・中海の淡水化問題が白熱していた時であります。それをきっかけにして,土浦市、富士市,中村市,柳川市,小山市,高槻市,新潟市,東京都,長良川,釧路市,横浜市と毎年場所を移しながらこの大会を開いてきました。
 その結果、各地域での住民運動を激励し鼓舞すると同時に、問題を抱えた人々がここに参加することによって,経験を交流し全国的に運動を進展させていこうということに努めております。
 回を重ねるごとに水環境に対するテーマが広がってまいりました。これらの大会で論議された「親水権の思想」「霞ヶ浦・アオコ河童からの提言」「雨水活用の水源自立の思想」「樹を植えて魚をふやす思想」「情報公開の要求」「アメニティの思想」などは、今では、水環境の保全、再生をめざす国民共有の価値観になってきました。
 これらさまざまな「水環境の思想」は、住民運動を通じて行政に影響を及ぼすまでになり、一昨年に発表された建設省の河川審議会の答申にも盛り込まれて、現場の河川行政のすすめ方にも変革の兆しが見えてきました。
 今日拝見しましても,毎年参加される方々の他に,新しい方が地元および全国から参加しておられます。ご年配の方も、また若い人々も参加しておられます。この大会は、住民と行政と研究者が全く対等の立場でお互いに意見を出し合い,合意をめざしてがんばっていこうということであります。私はこの会議がこれからの日本の水環境および環境問題の方向をさし示すものになると信じております。
 この会は、東京に本部があるというわけではなく,毎年場所を設定し、それぞれの地元が現地実行委員会を結成して実施することになっています。そのために、毎年雰囲気が変わり、新しいテーマが出ることによって、水郷水都全国会議がマンネリ化することなく,毎年生まれ変わるような気持ちで進展していくのだと思っております。
 今回は三木先生をはじめ,梅原猛先生やいろいろな方が参加して下さいます。今日,明日と論議が実り多いものになり,それぞれの地域での運動の進展に寄与することを祈願しております。


圓藤徳島県知事祝辞(内藤徳島県理事代読)

 本日は、第12回水郷水都全国会議徳島大会がこんなにたくさんの皆様方をお迎えして,盛大に開催されますことを心からお喜び申し上げます。始めに、全国各地からお越し下さいました皆様方を県民と共に心からご歓迎申し上げます。すでに昨日から四国三郎として全国的にも有名な吉野川を始め,徳島県の主要な河川を見学され実感していただいたと思いますが,本県における河川は豊かな自然を多く残しており,古くから私たち県民に多くの恵みと憩の場を提供してくれております。また,その反面暴れ川でもある吉野川を始めとする本県の河川は,これまでの洪水によって甚大な災害を引き起こし,多くの尊い人命や貴重な財産を奪ってまいりました。このため私たちは川に対する敬愛と畏怖の念をもって,川と深くかかわりながら生活を営んでまいりましたが,川とのかかわりから学んだ、自然を畏怖し自然と共生していく気持ちを忘れることなく,安全で自然豊かな川を後世に残していくことが私たちの使命であると思っているところでございます。
 さて,本県は平成10年春に明石海峡大橋が完成し,これに伴って長年にわたる県民の悲願でありました本州との陸路直結が実現し,新たな交流の具現として,また近畿圏の一員として大きな発展が見込まれているところでございます。こうした変化の中で吉野川を始めとする河川をより安全に,また,豊かな水環境を最大限生かせるように,治水・利水,そして環境を柱にした川づくりに努めていくなど,安全で快適で、しかも自然豊かな県都づくりに全員一丸となって邁進しなければならないと考えております。この度は多くの県民が参加のこと,あらゆる立場の人々が本県の将来の目標でもあります,川と人,川と地域が共生する社会を見据えて,目標に掲げることは誠に有意義なことと考えている次第でございます。最後になりましたが、本会議の開催にあたりまして,多大のご尽力をいただきました大会長でいらっしゃいます三木睦子様を始め,関係者の方々に感謝申し上げますとともに,本会議が実り多いものとなりますことを心から祈念いたしまして,お祝いの言葉とさせていただきます。

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