海部川中流写真集2 海部川中流、支流のスケッチです。少しずつ光を拾い集めています。(10.7更新) |
||
さざ波が立ち、水がゆらめいて水底を人の目から遮る。ということは、魚の目から川岸の人の姿が消えるということ。 | 午後からの海部川 来週は予定が詰まっているからと仕事をしている日曜日。でも表通りの午後の光を浴びたときもうじっとしていられなくなった。8月下旬とはいえ久々の真夏日、太陽の光に照らされた海部川の玉砂利が浮かぶ。 手際よく身支度をして14時過ぎに出発。途中で給油し、国道55号線を南にハンドルを切る。1時間あまりで海部郡牟岐町。ここからさらに国道を海沿いに走るのだけれど、きょうは行く先を海部川中流と決めてあるので近道をする。 玉笠林道は、海部川中流域への近道。国道からしばらくは牟岐川沿いに開けた里山風景で心がなごむ。途中から1車線となり、山中に入ると林間のドライブとなる。ガードレールがないところもあるが、心地よい森林浴の時間となる。 国道を離れて十数分、牟岐川が見えなくなるとヤレヤレ峠(不思議な地名)に。ここを越えると海部川流域になる。峠は分水嶺だ。道沿いに現れた沢は海部川支流の玉笠川。この支流で少し涼んでいく。ゆるやかな谷間に午後の日が差していた。 水と光の交錯が見えたのでカメラを取り出す。50ミリf11。レンズを絞り込むとシャッター速度が1秒になるので三脚を水のなかに立てた。樹幹をくぐりぬけた光が浅い水面に微妙な影を落とす。光の明滅は一瞬一瞬に表情を変える。太陽の公転を地上の樹木が拡大して見せてくれる。 海部川本流で一番好きな場所に。目の前に淵があり、子どもの飛び込む岩があり、対岸には冷たく清冽な沢の水が落ちている。そのまま流されれば「海部川川底庭園」とぼくが呼んでいる場所が白砂の川底がすぐ下流にある。 淵の水深は3メートルから4メートル。水流が渦をまくように淵の周辺の砂底掘れこんでプール状となっている。ここを抜けると急に川は浅くなり、歩いて渡れるほどになる。この淵と瀬の組み合わせが絶妙。竹林のざわめき、魚の跳ねる水紋。川の時間そのものだ。 道路の拡幅のため、それまで山際を縫っていた道路が川に沿うように走るようになったのが1995年頃。そのため竹林がなくなった。この竹林は、道路と川を切り離しヒグラシの厭世的な声が流れる夕刻の静かな時間を感じさせてくれていた。河原も広く、しかも玉砂利は寝っ転がるのに最高だったのだが。 川そのものはそれほど変わっていない。けれど水が流れる場所だけが川ではない。この工事でぼくの足が海部川からやや遠ざかった。 それでも身体を水に預けて浮かんだり潜ったり、岩盤に沿って淵を沈んでいくとコバルトブルーの水底の石に舞うアユの群れ(淵のアユはなわばりを持たない)がいる。オレンジ色のストライプを身にまとったウグイ(この辺ではイダと呼ぶ)が反転する。ウグイは銀色の無地なのだが、婚姻色が出ると彩色される。からだをほんの10分預けるだけでミネラルを含んだ水に癒される。 水面を飛ぶ赤とんぼを見ていた。ゆーらゆらすいすーい…。85ミリレンズのファインダーのなかで、水面にすうっと現れる光景に見とれていた。 川に遊んでもらって家に帰ったのが20時前。今夜はぐっすり眠ろう。 |
|
瀬から淵へ徐々に切り替わっていく。その境目が川の持つ階調(トーン)。海部川の楽しさは、リバートーンそのものかもしれない。 | ||
夏休みには毎日子どもが飛び込んだ淵。9月はひっそりとしているけれど、水温はなぜか温かい。9月の川で快適に泳げることをご存知だろうか。 | ||
1995年までは海部川一のキャンプ地であったところ。竹林を背景に従え、絶妙の瀬と淵があり、向かいの山からは冷たい湧き水が流れ込んでいた。 | ||
淵から瀬へのリバートーン。水の色が徐々に明るさを取り戻していく。それは川底が受け取る光の粒子が増えてくるから。透明度とは光の粒子を集める力かもしれない。中流域でこんな淵を持つ川は四国には少なくない。 | ||
支流のひとつ。玉笠川。牟岐町から海部川中流域への短縮ルートであるヤレヤレ峠超えで出会う谷。(→) 人影はほとんどない。光にあふれた本流とは違い、ひっそりと沈んでいる。 |
||
海部川中流風景 → 中流風景2 → 中流風景3 → 中流風景4 → 中流風景5 空と海 > 四国の川と生きる > 南四国海部川の時間 |
||
撮影はすべてミノルタのX700という十数年前の古典的な一眼レフを使っています。ミノルタのレンズの明るくつややかな発色、それは人生肯定的というかハイライトの光の集め方が好きなのです。ズームレンズは使っていなくてすべて単焦点。ときどきはレンズシャッターのライツミノルタも使います。フィルムはプロビア。デジカメでは微妙な光の遊びを受け止めてないような気がして、まだ購入していません。 | ||
Copyrights(c) 2002 Soratoumi, All rights reserved |