四国の川番外編その1〜ベストナインを公表! 他地域の川チームは四国に勝てるか?
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四国の川は全国で何位? 全国川コンテストが開かれるとしたら楽しい。そこで各地区予選が必要となる。四国で勝ち抜けば全国上位は間違いない。 → 説明を飛ばしてベストナインを見る 四国の川が有利な点は、まず水の清冽さ。平均値で言えば、北海道と並んでトップクラスだろう。四国の山間部の降水量は3千oを越える。湿潤な四国山地に降った雨がもたらすのは豊富な水量である。 例えば、吉野川の全長は198q(194qが公式となっているが)で全国の大河のなかでは普通であるが、基本高水(洪水の想定量)のピーク流量では、利根川や信濃川を凌いで全国一である。同様に、四万十川、仁淀川、那賀川の水量の多さも際だっている。たっぷりの水量は自浄作用が高いうえ、流域人口が少ないので生活排水の負荷も少ない。こうした理由で四国の川の水質が良いのだ。 しかし川は流れる水だけが尊いのではない。四国の場合、そこに住むヒトの暮らしと濃厚に関わっている。温暖な気候とあいまって一年中、人の姿が絶えることはない。まさに365日の川との関わりがある。現に四万十川を中心に専属の川漁師という職業があり、川の恵みを収穫するだけで食べている人々がいる。そんな人々が何冊かの本になっている。 そこにかかわる風土、風物詩。例えば、吉野川には全国一の規模を誇る竹林の帯(水害防備林)が数十qにわたって続く。竹林といっても、分厚いところでは幅数qに達し、中に入れば密林のように方角がわからなくなるほどである。善入寺島は竹林に囲まれた吉野川中流の中州であるが、大正年間まで3千人が住んでいた島である。 その独特の言葉の響きとともに、日本人に忘れられない川といえば、四万十川である。不入山に源を発した流れが窪川町で海の近くをかすめて再び内陸をめざし、蛇行しながら二百q近くを旅する川である。 ダムがなければ、その水量の多さ、水質の良さ、流れの速さで名を成したに違いないのが那賀川である。 四万十川の影に隠れているが、同じ高知県の仁淀川は四国第四の大河であり、第三の大河那賀川とは対照的にゆったりと流れる。 大雨が降ると水に潜る橋を、徳島では潜水橋(せんすいきょう)、高知では沈下橋(ちんかばし)と呼ぶが、これは四国の川ではごくありふれた、しかしどこかなつかしい風景である。 川で遊ぶ子どもを川ガキというが、南四国の川では、4月から11月頃まで出没し、夕方まで川に浸って遊んでいる。ときどき撮影に行くと、補導されると勘違いした子どもたちが逃げ出すこともある。ぼくは自分が子どもの頃は毎日川で遊んでいたので、川で遊ぶ子どもが好きだし、川で遊ばせない理由はないと思っているので、一緒になって遊びたいぐらいだ(しかし川が危険というのなら、それ以上に危険に思える携帯電話の使用(電磁波)や添加物満載の食べ物を食べることなどを禁止しないのなぜだろう)。 いずれにせよ、四国は川ガキの天下である。しかし近年は過疎化の進行で川で遊ぶ子どもの姿が減りつつあるのは寂しい。 まだ取材ができていないが、愛媛県の肱川も注目している。冬の肱川嵐と呼ばれる突風、鵜飼いの伝統、支流小田川での川を守る人々の活動や近年のダムをめぐる住民投票の動きや、河畔に栄えた商人のまち内子。ユニークなのは、下流の大洲市から国道を少し南下すれば源流域という釣り針のようなカタチをしている。 ここまで書いて、いっそそれなら各地域と野球をしてみてはと思いついた。2002年夏の甲子園は、ベスト8に四国の4校すべてが進出しましたね。そこで9人、いや9河川のオーダーを組んで全国と他流試合をしたい。それでは注目の川甲子園・四国チームのオーダーを発表します。 1番 海部川(徳島県) 2番 野根川(高知県〜徳島県) 3番 那賀川(徳島県) 4番 吉野川(高知県〜徳島県) 5番 四万十川(高知県) 6番 仁淀川(愛媛県〜高知県) 7番 肱川(愛媛県) 8番 安田川(高知県) 9番 土器川(香川県) 代打 穴吹川(徳島県) 新荘川(高知県) 加茂川(愛媛県) 勝浦川(徳島県) 面河川(愛媛県) 黒尊川(高知県) 吉野川源流(高知県) 説明しましょう。 1、2番は、穴吹川以上ともいわれる水質を誇る四国東南部の清流コンピ。上質のアユを産出する流れは小振りであっても俊足でヒットを打つ確率が高い。手ですくってそのまま飲めそうな水は人々を魅了する。 3番は、鷲敷ラインの急流を持つ那賀川。全国最多雨記録を持つ木頭村を源にし、剣山の水を集めた坂州木頭川と合流し、流れの早さから来る腰の強さ、瞬発力、近年は村長自ら先頭に立って細川内ダムを建設中止に追い込むなど、クリーンナップの一番手としては十分。 4番は、もちろん吉野川。源流の想像を絶する美しさ。いくつかの巨大ダムで分断されながらも四国山地の水を集めて甦り、国土交通省をして基本高水日本一の値を取らせ、大歩危小歩危という日本一の長大な渓谷を持ち、さらに秘境祖谷を従え、高校野球で有名な池田町からはくるりと向きを変えて東向きに流れる。日本の大河で東西に流れる唯一の川であり、太陽が川から昇って川に沈む。さらにこれまた日本最大規模の竹林が川を囲み、かつて3千人が住んだ大きな中州を持ち、河口から14キロにある豊かな生態系を誇る第十堰は、250年間の人と川の関わりの歴史を刻む。この未来に継承する資産を住民の力で守り、日本の民主主義の夜明けを開いた。最後はラムサールにも登録された河口干潟。シギ、チドリ、シオマネキなどの宝庫で世界的にも貴重といわれる。これだけの川資源を持つ吉野川なら全日本の4番を打てるでしょう。 5番は、ゆったりと蛇行しながら流れる日本最後の清流四万十川。川が人々の胸に文学、郷愁として甦る希有の例。全国からの旅人を癒す働きは長距離砲としての5番にぴったり。ぼくなどは「しまんとがわ」と聴くだけでもう胸が熱くなる。南四国の雄として永遠にその流れを保って欲しい。 6番は、仁淀川。ゆったりと蛇行するひょうたんのような流れは癒し系。吉野川、四万十川のあとを受けられるのはこの川しかない。 7番は、愛媛の雄、肱川。ユニークさではひけを取りません。 8番は、四国東南部の里の川、安田川。小さな川ですが、ダムがなく、上流には温泉があり、ここも良質のアユを産出します。 9番は、 香川県の土器川です。香川といえば、里山とため池に囲まれたビオトープの宝庫。小さな小川といえどもふるさとの川として地元の人々に愛されているはず。そのなかで弘法大師空海を育んだ風土に敬意を表して抜擢しました。ところがこの川の上流の山域には、空海こと弘法大師の手による治水がほどこされた満濃池があります。 → ため池や棚田,遊水地など伝統の治水の秘密を解く 代打を見ていきましょう。 四国一の清流、穴吹川が代打です(なんと贅沢な)。支流だから代打の切り札にまわってもらいました。 ニホンカワウソの目撃例がある新荘川は、太平洋に注ぐ小さな川。でも葉山村の雰囲気はなかなかいいものです。 加茂川は、愛媛県西条に注ぐ清流。下流が市民の生活に溶け込んでいます。 勝浦川は、四国一小さな町でありながら元気印の自治体上勝町から徳島市までの流域ネットワークの活動があります。棚田や木の葉を料亭に出す「彩」(いろどり)などほんとうにアイデアの流域です。 面河川は、仁淀川の上流の名称です。石鎚山の南面の面河渓谷は美のオブジェそのもの。 黒尊川は、四万十川でもっとも四万十川らしい下流の集落、口屋内に流れ込む清流。ブナの森から流れる清冽な水が四万十川下流に一抹の清涼感を与えるのです。 なぜ、鮎喰川が入っていないのだとお叱りがありました。徳島市で吉野川下流に注ぐ大きな支流で、その名の通りうまいアユが釣れる川。しかも夏休みはカッパ天国となります。 最後に吉野川源流。宝石のような流れは、水の存在さえ忘れさせるほど。 こうして見ていくと、四国の川は清流打線+癒しの守備力+人々の暮らしと密接にかかわるコミュニケーション力で総合的にはトップクラスですね。 他地域を見てみよう。沖縄、奄美には人知れずいい川がありそうだが、九州は川辺川、大野川、五ヶ瀬川の支流北川ぐらいか。中国地方は、江の川に千代川? 近畿地方は、京都の美山川や和歌山から三重にかけていい川があり、さらに里山を舞台に琵琶湖に注ぐ川も忘れがたいが…。中部地方は、長良川を親分とする木曽三川や天竜川の支流ぐらいかな。関東は那珂川を除いて都市河川。甲信越は、信濃川の支流の魚野川や阿賀野川上流の伊南川があるが…。東北は、川は長いが、水辺は楽しめるだろうか。遠野付近の猿が石川や露天風呂が楽しめる川がありそうだ。北海道は水がきれいだが、水温が低い。 日本の降水量分布を見ると、高知県、徳島県、和歌山県、三重県が降雨量の多い地域です。またいずれも林業が盛んな地域。 ということは、いかに森(と人)の営みを健全に保てるか。つまり人々の意識と実践が今後の差を分けるでしょう。いい川を自慢できる21世紀の日本でありたいもの。 他地域からの挑戦をお待ちしています。同じようにオーダー組み、理由を書いてお寄せください。 でも四国の川には勝てないだろうな。降伏して遊びにおいでよ。(降伏=幸福) ▲戻る |