WEBに感じること(その1)
〜オフラインを助ける地域WEB (2000.1月)

 今やインターネットのWEB(ホームページ)はどれぐらいあるのでしょうか。そして星の数ほどあるWEBのなかから、どうすれば自分のサイトを選んでもらえるのでしょうか。昨今話題になっている楽天市場のようなところへ場所代を払ってオンラインテナントになるのも一方法です。何と言ってもアクセス数が多いからです。だからといって、ここに登録さえすれば売上が増えるものではありません。

 中小企業にはあまり関係ありませんが、アクセスが多い検索エンジン(例えばヤフーなど)にバナー広告(数百万円/月?)を掲載しても、よほど特典のある記事でなければアクセスしてくれません。そればかりか「なんだ、バナー広告か」と無意識に視線をそらされているのではないでしょうか。ちなみに私が最近覗いた広告は、メールマガジン「まぐまぐ」から配信されるマガジンのトップに掲載されていたもので、つながりやすいプロバイダとして定評のある「iij4u」が月額800円の期間限定で登録料無料を打ち出したときと、デルコンピュータの「大幅値下げ」の広告です。パソコンでインターネット環境の人なら興味をそそられますよね。

 それにしても、ネットに占める普通の生活者の勢いはすさまじいものがあります。今このときでも、毎日どこかのメーリングリストで主婦や趣味サークルなどで無数のメールが行き交っていることでしょう。1人の生活者が巨大組織と対等の情報発信力を持ち得るWEBの世界はほんとうにすばらしいです。そこにはハンディキャップも高齢者もありません。

 ところで話題の楽天市場のなかでも、トップクラスの売上を誇る「ワイナリー和泉屋」      (https://www.rakuten.co.jp/wine/)を覗いてみましたか? デザインは決して洗練されているとはいえず、どちらかといえば、WEBのガリ版刷りといった感じですが、店長の思い入れがうち寄せてくる迫力に圧倒されます。もちろん1人よがりなら、うっとうしいだけかもしれませんが、ワイン通にはたまらないネタがごろごろ。目玉はオークションです。最低落札価格1円から設定されていますが、実際の落札価格を見てみると、びっくりするほどの高額で落札されている場合があります。価格が明示されて安心感を与えることはとても大切です。その一方で、お遊びが楽しいんだという人も少なくないでしょう。実際ほかのサイトでもオークションはかなり盛り上がっているようです。

 こうなれば、WEBは「情報を的確に探し出す必要があり、かつ時間のない人のための道具」からコミュニケーションを深めるもの、もっといえば、コミュニティそのものになりつつあります。実際、アクセス数の多いサイトはファンクラブ化しており、企業(主催者)と購入者(会員)という枠を越えて、生活者同士がオンラインの上に時間と空間を越えた王国を築いています。これって何? 国家、自治体って何? と思わせる感覚です。

 中小企業にとっては、インターネットにつながれた広大な世界の狭い範囲でどれだけ独自の世界を築けるかでしょう。ひとつの切り口は地域です。

 つまり、オンラインに頼るのではなく、オフラインでの購買行動を補助する役割としてのWEBがクローズアップされてきます。例えば、米屋さんやパン屋さんに買いに行く前にアクセスして焼きたてや銘柄を確かめる、そして登録すれば配達してもらえる、それを関連する異業種の事業所が連携して顧客データベースを構築し、one to one の関係の構築をめざす。販売するのは品物、価値があるのは情報です。徳島でもそんな試みが最近始まりました。お客様がそのコミュニティから離れられなくなるかもしれません。