■Webデザインその3〜テキストに始まってテキストに終わる(2000年10月)

 前回までは、直感的に操作できるデザイン(サイト設計)の重要性、そして色彩が心理に与える受容性について触れました。今回は、テキスト(文言)です。

 欲しい情報があった時、皆さんはどうしていますか? インターネットがなかった時代なら、まず図書館へ駆け込みました。今でもそうですね。

 ところで図書館へ行って「本が多い」と苦情を言う人はいませんよね。欲しい情報は手間暇かけてでも探し出したい、詳しく知りたいのがヒトの気持ち。知りたい情報なら文字が多いのはむしろ大歓迎ですね。テキスト情報のポイントは2つ。読みやすくわかりやすいために「起承転結が明確」なこと、「数行ごとの改行を入れる」こと。この点でほとんどのWebサイトがもうひとつ。大切なのは、こちらが言いたいことではなく「相手が知りたいこと」を伝えること(きっぱり!)。

 世界中で数億サイトもあるWeb。最近の日本人の1ページ当たりの平均滞在時間はどれぐらいでしょうか? 女性と男性で異なる結果が出ています。日経BP社の調査では、1ページ当たりの平均滞在時間は男性が25.7秒なのに対して、女性は44.6秒。つまり女性はじっくり型、男性はパラパラ型です。仮に30秒とすれば、この時間で読める文字数は400文字くらいでしょう。斜め読みが得意な人はもっと上がりますが、目が疲れている、小さな文字で色使いが見にくい場合はさらに下回るでしょう。しかし1ページ当たりの文字数は400〜500文字とすれば、スクロールなしで1ページに収まるはずです。

 でもその前に欲しい情報を読ませる工夫が必要ですね。次のサイトへ飛び込んでくれなけれは、いくらいい文言を並べてもムダです。奇をてらわないのに興味を引く言葉ってありますよね。Webにおいては、テキスト(コピー)ライティングはひとつの独立した仕事。デザイナーや技術者の片手間ではちょっと違うかな?って感じ。
 どんな書き方にすれば興味を引くかの実践法やノウハウなどは、折々お伝えしますね。ただし本気で実践してくださいね(^_^)v。

 3回シリーズで拾えなかったコツをまとめてご披露。

・「information」「about us」「mail to」 などの英語見出しは独りよがりで嫌われる。ただし全文英語のサイトを併設すると「海外からの問い合わせ」もありうる。

・短いテキストは、当たり障りのない広く浅い内容で意味がない。ピンポイントの質問にピンポイントで答えるために「狭く深く」。文字の多いのは意外に気にならない。

・デザインの洗練度とアクセス数は比例しない。デザインはあくまで直感的に操作させるため。

・色彩は人の感情を高ぶらせたり落ち着かせたりする働きがある。心理学を知っていればなおよし。例えば、情緒的な文章はコントラストを弱める対比で。

・営業マンが小声でささやきかけるテクニックのように、中央に大きく表示するのが目立つとは限らない。

・少なくとも1週間に一度は更新。メールマガジンの発行は必須(土足で上がらない)。・きれいごとの文言では「熱意」と「本気」が伝わらない。ホンネでお客様と付き合おう(もっとも大切なことかも)。


■電子メールソフトって大切です

 OSにウィンドウズを使っていると仮定して話を進めますね。

 付属してくるのは、アウトルックとアウトルックエクスプレスです。このうち、アウトルックはセキュリティーホールの問題があるので使っている人はほとんどいません。もし使っていたら、安全のため今すぐ他のメールソフトに乗り換えてください。今年前半に猛威を振るった「ラブレター・ウィルス」もアウトルックが感染源でした。メールソフトに関しては、マイクロソフトのような世界的大手のソフト(大味で欠陥が目立つ)よりも、アマチュアや小さな会社の製品にいいものが多い、というのは皆さんの一致した意見です。

 具体的におすすめの一つとして、ベッキー(最新バージョンの名称は、Becky!Internetmail 1.26.05)があります。入手先は、パソコン販売店ではなく、オンラインでダウンロードして解凍する必要があり、ある程度パソコンの基礎知識は必要です。電子メールはコミュニケーションの基本ですからいいものを使いたいですね。このベッキーには固定ファンは多いのです。入手は「窓の杜」のソフトウェアライブラリー、電子メールソフトと入って探してください。パソコン雑誌付属のCD-ROMでも入手できるでしょう。

窓の杜 http://www.forest.impress.co.jp/

 ベッキーに限らすオンラインソフトは、こまめに改良(バグ直しなどのバージョンアップ)をしています。作者の愛情と手作りの熱意が伝わってきますね。

 ベッキーの特徴として、

・メーリングリストの管理が容易。
・メールマガジンを購読している人は、ベッキーの振り分け機能をうまく活用すると、お金のかからないデータベースが完成しますよ。
・例えば、日経の無料メールニュースを購読しているとして、そのなかで、環境関連のビジネスのマガジンがあります。それを一つのフォルダーに自動的に管理できるように設定する=それが振り分け機能です。
・こうしたマガジンニュースはいちいち全文読まなくても、必要なときにキーワード検索をかけて調べる使い方ができます。例えば、ある企業が新素材による排気ガスの浄化システムを開発したとすると、その事例を調べるために、「排気ガス」「浄化」などのキーワードで全文検索してみると容易に見つかります。
・全国のローカルニュースの抜粋記事を毎日配信してくれるサービスもあります。これも読まずに検索をかけることで、必要な各地域のローカルな話題が拾えます。
・ベッキーは試しに使ってみることができますが、気に入れば4000円送金する必要があります  (著作権に対する正当な対価です。必ず払ってくださいね。この内容で4000円は安い、というのが皆さんの意見です)。このほかに、安定感抜群のEdMax (エドマックス)も高い評価を得られています。これらはいずれもオンラインソフトで、窓の杜から入手できます。使い方については、ガイドブックもいくつか発売されていますので、そちらを参照ください。
 

■ エッセイ〜小さなCDプレーヤが奏でる小宇宙

 特技かどうかわからないが、ぼくの耳は他の人が聴こえない微妙な音の差異を聞き分ける。例えばステレオ装置の電源コンセントの向きで音が変わるが、どちらか一方の音を聞くだけで判別できる。極性が正しければ一聴して中央の音像イメージが濃厚になるのだ。

 小さい頃からせせらぎや虫の声を擬音化して聴いていた。水の味にも敏感だ。生まれて一度もタバコを吸ったことがないからかもしれない。そんな五感を持って世の中を見ている。そんな感性で生活者や経営を見ている。

 最近寝静まってからの楽しみが増えた。音のいいCDプレーヤーを発見したのだ!それは、ソニーのCDウォークマン。てのひらの乗る200グラムの銀色に光るアルミパネルの質感の高さ(眺めるだけで幸福になれそう)、蒼く光るディスプレイの洗練された雰囲気、簡素なだけにいつも手元に置いておきたくなる。

 その小さな箱が奏でるさりげなく深い余韻に打たれてしまった。音楽がベールを取り去って直接飛び込んでくる。こんなにも音楽は無垢だったのか…。聞き慣れたCDを取り替えては小さなヘッドホンで聴く。どんなに音楽が複雑に折り重なっても、その動きの底が見える。音塊の濃淡が溶け合うブレンド−−−ピアノでいえば、叩いたときのカツンという直接音とコロンという丸み、それを包みこむ微かな間接音−−−えもいわれぬ幸福感に浸ってしまう。特にピアニシモが絶品。音楽が空間に消えていくことの意味を教えてくれる。

 数十万円もする高価なCDプレーヤの音は壮麗であるが、音の濃淡のない美しい厚化粧のなかに音楽が埋没してしまう(ほんとうの豊かさとは、汲めども尽きることのない音楽の泉を感じる心にあると思うのだけど…)。

 ソニーではポータブルCDプレーヤー発売15周年記念の高級モデルを出したが、ぼくがおすすめする製品は同じデバイスを使いながらも汎用性、生産性を高めたものだ。

 音の良さは単三乾電池2本で40時間動く低消費電力設計にある。こうして信号は短い経路で鮮度が高いまま耳に届けられる。それに対し大型オーディオ装置は、長い信号経路と複雑な接点を通って数百ワットの消費電力で大きな振動板のスピーカーを駆動して音波に変える。その増幅の過程で少しずつ失われ、微妙な音のニュアンスは消え落ちる。 

 ジョギングしても音飛びしないメカニズムなので戸外に連れて行きたいが、机に置いて仕事の合間に聴いてみたい。ACでも使えるが充電池で使うといっそう音がよい。ヘッドホンではなくスピーカーで聴きたい人は、同じソニーのアンプ付きスピーカーSRS-Z1(18000円)と組み合わせる。これまた、てのひらに乗る大きさながら、そこからこぼれる音は繊細で、机に置いて顔を近づければ濃密な音楽の小宇宙があふれ出す。

 友人知人に伝えてみたところ好評だった。できるだけ多くの方々に音楽の歓びを知ってほしいと思い、顧問先の販売店の協力を得てこの逸品を2万円(税込)でお分けいたします。台数は5台まで(直接お渡しできればいいですね)。これでジョージ・ウィスンストンのピアノ、聴いてみてください!

 以上の紹介メールのなかに経営のエッセンスが込められていること、お気付きになりましたか?

 いつのまにか秋ですね。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番、グリーグのピアノ協奏曲は、秋の思い出の曲。

え、どんなラブストーリーがあったかって? そんなこと内緒…。