衰退産業はチャンス!〜和服販売(2000年9月)


 衰退産業と言えば、将来性がない、儲からないなどの暗いイメージで語られる。しかし、成熟〜縮退市場と見られながら、安定した経営を続けている県内企業にいくつも巡り会った。今回はは県外の事例で和服販売を見ていく。

 和服市場を例に取ると、一世帯当たりの婦人用着物の支出額は1982年の13,600円から1999年は約5,700円(総務庁統計)に減少、少子化も追い打ちをかけている。

 ところが、和装小売りチェーンの「京都きもの友禅」が高い成長を続けている。2000年3月期の経常利益は15億3千万円と1997年3月期の4.6倍に。今期も19億9千万円と30%増を見込む。

 京都友禅は取引ルートや取引形態を見直し、メーカーから直接大量に買い切る方法を導入し、支払手形の決済期間を5ヶ月から3ヶ月へと短縮。メーカーは資金繰りが安定することから京都友禅との取引を歓迎し、安値での着物提供に応じた。さらに絵柄の要望など優先的に応えてくれると社長は言う。

 買い取りによる在庫リスクは、本社が売れ筋情報を一括管理。仕入れ権限を本社に集中させた結果、在庫回転日数は前期に116日と、97年3月期より49日も短縮させた。

 陳列した振袖の前には、百貨店の売値と比較できるようカタログが置かれている。それによれば、百貨店より4〜5割ほど安いらしい。にもかかわらず売上総利益率は2000年3月期に56.7%、売上高営業利益率も97年3月期の5.0%から14.8%に高まった。

 こうした大量仕入れと徹底した安売りにより、店舗数が増加。1991年に10店舗だったのが2000年3月期末は30店に増えた。

 市場の将来性を考えると、新規参入する競合企業はありえない。しかも今後は撤退する企業も増えてくるし、新たに戦略的な経営を行う企業も考えにくい。つまり、伸び盛りの産業と比べると、衰退産業では決定的に競合が少ないという利点がある。

 こうして市場を寡占化すれば、一般的に利益率は高まってくる。顧客は売れている店で買う傾向が強まるため、顧客満足を高めながらも主導権は販売店が握るようになる。こうして市場の落ち込み以上に成績を落とす事業所と、そのパイを吸い上げながら売上高、利益率を高める事業所とに二極分化される。

 和服の販売方法においても一考の余地がある。呉服を買うところはあまり見られたくないという顧客心理から、これまでは店内の商談コーナーを目隠しするのが常識であった。その慣習は顧客側にもなじみのため、撤去したほうがよいというわけではない。

 しかし縮退市場では、新規顧客の獲得が不可欠で、和の装いの日常化への提案は欠かせない(数年前に浴衣ブームやDCブランドの参入があったが定着しなかった)。そうなれば、もっと開放的なレイアウト、心理的敷居の低い店構え、明るいながらも落ち着いた照明、木と紙の文化を店内に現代調で再現し、着物についての生活提案を店頭はもちろんWeb上でも行いたい。

 Webでは、興味を持った人に対する、価格と品質に対する信頼感を高めるためのアドバイスをする絶好の機会となる(従来は、老舗というのれんが果たしてきた)。

 普段和服を着ないくせに、万葉集や源氏物語(好きな人、メールください!)の大好きなぼくは、着物のない生活なんて考えられない、と思ってしまう。