「知らせいたのに、知らせられない」

 店舗施設が売上に及ぼす影響は、それほど大きくないと考える。それよりもその店の独自性(自分の土俵)を持っているかどうかが優先する。けれど商売の基本は女性客である。女性(客)は、「感覚的」「生理的」に物事を判断している割合が高いことは周知の通りである。

 店舗施設が醸し出す空間に対して女性客が(無意識のうちに)どのように反応するかについて思いを巡らし、研修会などで「女性は五感を大切にしている。男性の視点からの店舗設計/演出ではなく、女性の視点から見ることが大切。具体策のひとつとして、マイナスイオン」もポイントのひとつなどと話した。数年前のことである。が、参加いただいた方はぴんと来ていないようだった。確かにそんな話をするコンサルタントは聞いたことがない。

 一方で今日の家電品を見ると、マイナスイオンのドライヤー(確かにさらっとしっとりする)、エアコンや扇風機、それにブレスレットなどマイナスイオングッズは枚挙に暇がない。現代人は癒されたいと感じていることの証ではないか。

 癒しとは、「リラックスや心地よさ」のみならず、「励まされる」「浸る」「夢中になれる」「子どもに戻る」「信じる」「人工的でない」など、さまざまな場面で呼び起こされる抗しがたい情感や光景が含まれると思う。しかし「安らぎ」や「気持ちよさ」の反面、「現実逃避」「寂しさを紛らわす」などのニュアンスも感じられる。そもそも、癒されたいからモノに頼るというところからしてそうではないだろうか。
 癒しの本質を見極め、いかにそれを満たすかを企画することが、店舗で接客する業種にとっては重要となっていることは疑う余地がない。

 マイナスイオンが脚光を浴びているが、女性にとってはそれ以上に肌の紫外線対策(または美白)は関心事となっている。先日、あるメガネ店の依頼で20〜40代の男女8人を集めてグループインタビューを行った。

 すると、意外なほど目の健康保持に対する関心が薄かった。集まった属性の人たちでは、携帯電話の月使用料と同等かそれ以下がメガネやサングラスに対する支払い意思額であることもわかった。今流行している「5千円、7千円、9千円」の3プライスのメガネチェーン店の躍進もその辺りにあるのだと思う。

 一生を通じてかけがえのない目の健康。それなのに20代〜30代女性は、目の紫外線対策には驚くほど無頓着である。情報があふれている反面、取捨選択、すなわち「判断」がうまく行っていないことに気付いた。
 相談やカウンセリングが必要なのだが、困ったことに彼女たちは、関心のない情報を得ることにはかなり消極的である。
 さらにカウンセリングというと高額品を売り込まれるイメージも否定できない。知らせたいのだけれど、知ろうとしてくれない人たちへの情報提供をどうするか。今日のマーケティングの課題である。 

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