「生々しいコンテンツ」で使用体験を情報化

インターネットで買い物を目的に検索するとしよう。関心はあるもののまだ購買を決めていない情報収集の段階では、その商品ジャンル、カテゴリーを検索語に置いてヒットしたサイトを漠然と眺めている。買い物という行為は欲しいと思った瞬間から始まるが、信頼する人の熱意ある説得(口コミ)と自分の「欲しい」という欲求、または「なけれはならない」という必然性が共鳴した場合、情報探索の段階を省いて意思決定に近づく。

ところが、大多数の企業や商店のコンテンツは意思決定を誘うような生々しい情報の提供が不十分だ。「生々しい」とは、使ったことがない(実際に見たことがない)商品やサービス、設備をあたかも使ったかのような疑似体験をさせる記述(=使用体験の情報化)という意味である。

書店に行くと「インターネットで簡単に儲かる」「たったこれだけで…」のようなタイトルの書籍が並んでいる。つかみは派手だが現実には効果はない。いや、初期の段階ではある程度は効果的であったかもしれないが、多数が同じような心理ゲームに基づいた販売法やキャッチコピーとなったため、口先テクニックは成立しなくなった。リフォーム業界などはその最たるものと言えよう。

持続的に顧客に買っていただくことための鉄則がひとつある。それは、使命感のように「伝えたい熱意」が売り手にある場合だ。美辞麗句や殺し文句をいくら並べたところで、自分が使っていないのに、自分が惚れ込んでいない商品やサービスなのに、それを人に売り続けることはできない。まずは、売り手の心の動きがあり、それに買い手が共感して商売が成り立つ。心の動きは何世紀を経ようとも変わらない。言い換えれば、伝える姿勢のなかに企業の哲学や理念が込められ、それを顧客が感じ取る。もちろん、キャッチコピーや文章書き、写真などの見せ方は必要だけれど。

すでに買いたい商品やサービスが具体化されている場合、「選択の後押しをしてくれるような記述、記事、感想が欲しい」といった欲求がある。その場合も生々しいコンテンツが不可欠である。自らの熱意ある情報発信はもとより、第三者や信頼できる専門家のお墨付きがあれば購買の意思決定に近づく。

手にとって見ることができないインターネットであれば使用体験の情報化が欠かせない。「使用体験を情報化」した「たった一枚のWebページ」が検索エンジンにかかり、ユーザーの信頼を勝ち得て、新規顧客やファンをほんとうに獲得している(県内の実例は「空と海」のWebサイトに掲載)。

自社のスタッフがいくら頭をひねっても「生々しいコンテンツ」が出てこない場合は、「売り」を見出すことに長けた人たち(目利きの中小企業診断士やコピーライターなど)に自社の製品についてインタビューしてもらい、はっとするような意外性(けれど普遍性)を引き出してもらうのも方法だ。けれど、まずはスタッフ自らがその商品、製品、サービスに惚れ込めるかどうか、使命感を持って事業経営をしているかどうか、結局はそこに帰結する。あとは「ホームページビルダーVer9」があればいい(新機能のスタイリッシュエフェクトを駆使すれば社内でユニバーサルデザインに配慮したセンスのよいデザインのWebサイトを制作更新できる)。

地元で買いたいと思ったときにその商品を扱っている店や企業のWebサイトを検索するとする。よほどありふれた事業所名でないか、検索エンジン対策を無視したHTML(ホームページ言語の記述)でなければすぐに見つかる。検索エンジンの進歩に加えて、独自性のある店へのブランド力(店名、社名を最初から顧客が指名する)によって、電子商取引を目的にした地域の雑多なポータルサイトの役割は終わったと言って良い。
確かに50代以上のオピニオンリーダーたちは、インターネットを使用する割合が高まってきたが、大多数の熟年者はまだまだである。そこで各地域で整備されているケーブルテレビのコンテンツを研究することが有望だ。そこでは、営利、非営利を問わず、必要な情報、モノ、時間、特技などの有形無形の地域資源がリストアップされ、それを必要とする人に引き合わせる場(コミュニティビジネス)としての役割が期待される。「地域にあるもの」を活用することに夢を見たい。


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