「会議は社内コミュニケーションの道具、そのあり方について」
会議は社内コミュニケーションの道具、そのあり方について
社内コミュニケーションとして重要なのが会議です。今回は、会議のあり方について考えてみましょう。
(1)経営理念の浸透と中長期的方針の決定
経営の意思決定において変化に対応する、変化を創造することが不可欠です。
となれば、変えないところ、変えるところを明確化しておかなければなりません。経営理念はその一翼を担います。「何をして飯を食うか」(事業の領域)を定義するものであり、「すること、しないこと」を社員が判断できる拠りどころです。基準点がないと、改革を行ってもアイデアの寄せ集めの中途半端な線香花火に終わったり、強みを失う泥沼にはまることもありえます。
事業領域を明文化するためには、数ヶ月をかけて、未来の利益はどこから来るのか(顧客、商品、市場とそれを確保する競争優位性)を全員で徹底的に話し合う時間が必要です。戦略は理念、方針を後押しするもの。決してぶれないよう。
(2)コミュニケーションのデザイン
仕事がら数多くの会社の会議に出席します。経営レベルの取締役会から部門の会議などさまざまなレベルがありますが、会社の組織は、必要なコミュニケーションを円滑に行うためのかたちであり、組織内で現状を認識して問題点をあぶりだし、その解決策を考える場が会議です。従ってそれぞれの会議には存在意義(目的)があります。
ところが多くの企業で会議が形骸化しています。会議の場で発表する資料ができて、あとは報告を聞くだけのシャンシャン会議がほとんどではないでしょうか? 組織は時間の経過とともに会議が増えていく傾向があります。単に情報の共有だけなら、文書の回覧やグループウェア、社内メーリングリストを活用することも一案です。
一方で発言力の強い人の一声で決まってしまうワンマンショーもあります。ぴりぴりした雰囲気の会議では、困ったことがあっても言い出しにくいし糾弾されることが怖くて問題点を明るみに出せません。会議によって改善されるという感触を持ち得ないので、メンバーにとっては、ただ無事に過ぎればよしの時間となります。企業も人の身体も病気を早期に発見し、対応を考えて行動(治療)に移さないと取り返しが付かないことになります。
メンバーの一人ひとりが経営者のように考えられればよいのですが、そのためには権限委譲が適切になされてなければなりません。担当者が「何をやればよいかわからない」で責任だけがあるのは権限委譲ではありません。自分で自分のまわりの状況を変えられると思えること、そして自分たちからの報告と提案に対し、幹部が適切に評価修正して追認、指示すればよいのです。
その背景には「利益は現場にある。それも一人ひとりの知恵と熱意と創意工夫が未来を切りひらく」との信念があります。くれぐれも上層部が抵抗勢力にならないよう。
会議の目的は3つ
(1)情報(課題)の共有
1)何が起こっているか?
- 問題点を持ち寄る。早めに対策してロスを防ぐ。
- 問題点に気付かないまま、取り返しの付かない状態に陥る「ゆでがえる」や「裸の王様」にならないよう。
- いま何が起こっているか、何をやろうとしているかを組織のメンバーが知らずして、改革はありえない。知る人と知らない人がいるという状況では派閥が発生し、落ちこぼれが出ることも。
2)なぜそうなっている?(問題点の抽出)
- 現象と原因を混同しないこと。現象(表面的なできごと)の背景にある因果関係を考える。把握する。例えば、「海面が上昇している」(できごと)→「氷が溶けている」(現象)→「森林の消滅、経済発展地域での二酸化炭素の排出増加など」(原因)。
- 問題の本質が把握できれば半分解決できたも同じ。
- そのためには仮説を実証する「データ」(事実)が必要。足りない材料、データは何かをリストアップする。
- そのデータはどの程度の情報量、精度、誰が作成を担当するか、いつ
までにできるかを吟味。
3)改善策の決定(意思決定)
- 出てきた課題の取り組みに対し、優先順位と締め切りを設定する。
- 起こりうる悪いシナリオを想定する。ここで潜在的なリスクがあぶりだされる。
- リスクに対し、現実的な解決ができること、どうしても解決できないことに分けて把握する。
- 改革の利点、デメリットを天秤にかけ、受け容れられるかどうかを吟味する。
- すぐに改善策が出なくても、「決めることを決める」。例えば、「この議題は、半月後の役員会にかけること」を決める。どんなことでも「決められる」ことはある
。
構成メンバーの数や時間は会議の目的によって違います。情報の共有化(回覧やグループウェアだけでは読まない人もいるでしょう)が主目的であれば、わかりやすいプレゼン資料(配布資料は1枚に絞り込めれば理想。プロジェクターを適宜使用)に基づいた報告をします。人数は全社網羅的にやや多め、時間は短めということになります。
会議の時間短縮にはコツがあります。会議の開始と終了時間を予告して厳密に運用します。報告の際は、結論(あるいは概要)を最初に話し、その裏付けはこれこれです、で充分。説明が足りないと思えても参加者からの質問に答えるかたちで補えばよいのです。議論の材料にならない不要な情報を一方的にしゃべることこそ時間のムダ。配布する紙の資料はA4サイズ1枚まで絞り込めれば理想です。
問題点の把握や改善に向けては徹底的な議論が必要ですが、活発な議論のためには適正な人数 ―― 6〜8人で行います。全社的に行う場合は、6〜8人ごとの班に分けたワークショップ形式で行い、検討結果を発表するのも良いでしょう。
冒頭のような中長期の事業領域の決定には、時間をかけて集中的に時間を持ちましょう。リラックスしたなごやかな雰囲気(ときおり笑い声がこぼれる)のなかで建設的な意見が次々と出て、決めるべきことが小気味よく決まっていくはずです。
その際にポストイットを活用し、自分の意見を紙に書いて考えをすべて吐き出すこと。こうして他人のアイデアにヒントを得たり膨らませたりします。つまりポストイット+ホワイトボードによるブレーンストーミングです。
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