ITは死語!」(2000年8月)

 今頃になってWeb作成をする企業が増えています。最近目立ってきた理由というのが、取引先の要請というものです。つまりWebを作成していないような企業とは取引を中止するといった風潮が出てきたらしいのです。また他方ではこんな声も聞きます。就職希望者がまっさきに会社の情報を調べるのはインターネット。その際に見つからないような企業は選択肢からはずされる可能性が高いということです。これはうなづけますね。

 モノを売るときに2つのサービスがあるとすれば、ひとつはモノを売る前の事前情報。就職のときは事前の企業情報が知りたいですね。お客様が知りたい情報が知りたいときに提供できるというのが、販売促進やイメージアップとしてのWebの使い方です。

 次に売った後のフォロー、メンテナンスなどのアフターサービスです。これはきちんとしたお客様データベースが整備され、Webと社内システムが連携することで、例えば昨日入社の新人が営業を担当しても、サービスの質が低下しないというしくみです。

 Webビジネスの研修会などでは、モノを売らないためのWebをつくってくださいと申し上げています。モノを買うというお客様の心理状態(いわゆるAIDMA)を考えると、これはきわめてまともな発想です。地域Webとしての使い方は、販促支援とモノを売らないWeb(すなわち知りたい情報の提供)の2つの側面が大きいのです。

 世の中の流れでしょうか、ぼくのところにもWeb作成の相談が頻繁に寄せられます。しかし「単に売れるホームページを作ってくれ」など目的のないWeb作成はすべてお断りしています。トップ自らが本気で取り組む姿勢が見えない限り、Webの導入は作成業者の懐を肥やすだけです。

 もうひとつの流れとして、最近パソコン教室が大流行しています。商工会議所などでパソコン教室を主宰すると、数時間で定員に達するとか。それも40〜50代のビジネスマンの姿が目に付くのと、60代からの定年後の熟年の方であふれかえっているらしいのです。前者はリストラの脅威を感じながら悲壮感を持ってなだれ込んできた感じが伺え、後者は、のんびりとしていて今週教えたことは来週までにすべて忘れているような人たちが多いそうです(ともにインストラクター談)。もちろんすべて色眼鏡で見るべきではありませんが…。

 ただしこのパソコン教室、プログラムを標準化する(つまり既成のプログラムをあてがって授業を効率化する)と、お客様の定着率が悪くなる傾向があります。当然の話ですね。一人ひとりはブロイラーではないのですから。都心部では、格安料金の代わりにビデオを見せるだけの教室もあるそうです。でもほんとうに教室に通う人が求めているのはそんなサービスなのでしょうか?

 パソコンの操作を教えるだけの教室ないしはアプリケーションの使用の説明をするだけでは、短期間で淘汰されるでしょう。なぜなら、パソコンやアプリは何かの目的のために使うものだからです。その向こうに拡がる広大な世界に思いを巡らせるようなわくわく感をどう提供できるかですね。ぼくなりにその答えは用意していますが、現在開業準備を支援している教室があるため、ここでは問題提起にとどめておきますが、実態のなかITなる言葉が一人歩きする間に世の中どんどん変わっていっちゃいます。

 実は、ぼくはパソコンを使い出してまだ1年ほどです。それまではワープロ専用機「富士通オアシス」の親指シフトを使っていました(これで小説を2作書いたよ)。どこに目を付けるか、どこに着目すれば商売になるかは、パソコン歴と無縁です。熟年の方、若造が指をパタパタ得意げに動かしてもひるむことはありません。経験知でカバーしましょう。