ISO14000がすべてではない」(2000年7月)

 地球上の生命の存続にとって危機的な状況が進行している。環境問題は、誰もが加害者であり被害者であり、くらしと密接に結びついている。

 既得権や利権と闘いながらの規制強化は困難を極める。例えば年間の二酸化炭素排出抑制を各個人に求められたとする。これまで乗っていた大型車をリッターカーに乗り換えて走行距離を減らす、といったことを人々が実施しようとするだろうか。はたまた族議員(ロビイスト)を従えた関連業界が承諾するかどうか。

 先日買い物をした際に、二社のうち ISO14000の認証工場で作られている製品のほうを選んだ。今は製品やサービスを購入する生活者の意識革命の真っ直中にあると思う。一人の生活者としてグリーン製品を選ぶのはオピニオンリーダーであり、ネットワークを持って周囲に影響を与えているこれらの人たちを無視できない。オピニオンリーダー(生活者)の意識を集結した存在がNGOであり、今後はNGOが主体的に進めながら行政や企業が参加するという形態になっていくことは疑いない。

 したがって新しい時代の環境対応は、政府主導でも業界主導でもなく生活者の視点で吟味され、しかも自主的に行われるべきであることがわかる。

 大手建設業ではISO14000シリーズの認証を受けることが取引発展の鍵を握る、海外事業所との提携では前提条件となる、などといわれている。それは、取引相手先が危機管理体制が整っているかどうか、合理的な生産システムを持つかどうか、計画、実施、見直しに至るまでの経営循環のしくみがきちんと確立しているかなど経営システムにおける一定の判断材料をISOが担保していると見られるからである。

 ISO14000の導入には、経営陣がどこまで本気で継続的に重大な決意を持って取り組むかが試金石となる。それがクリアできれば社内スタッフだけでしくみを構築することも可能である。しかし外部の視点は必ずどこかで必要である。要所要所で面倒見のいい相談役(コンサルタント)にチェックしてもらえればいいだろうが、地域のNGOからの指摘は参考になるだけに、企業や行政は学ぶ姿勢でNGOと付き合っていきたい。

 ISO14000は数値目標を持つ。しかし大切なのは、結果よりも正しい過程に則って行われているかどうかで、プロセスそのものの信頼性、透明性が問われている。ISOの導入は必然的に企業情報を開示することにつながっていくし、近い将来には「環境格付」が公表されるのは必至ともいわれている。

 ISO取得には時間が掛かる。通常1年程度の期間のうち、半分は取得の準備のための現況調査等、残り半分が試行と見直しである。

 忘れてはならないのが費用で、取得に要する費用のほかに毎年審査を受けるために数百万円かかることもあるし、その審査員の資質のばらつきも指摘されている。これも取引拡大のため、企業イメージ向上のためと思うならそれもよし。しかし本来は経営循環を環境基準で行うしくみづくりであり、導入の過程で、品質向上、コストダウン、危機管理、クレーム低減などさまざまな経営メリットを享受できる(見つけだせる)はずである。

 環境問題はできるだけ大勢の人がかかわることで実効力を持つようになる。そのために費用と手間のかかるISOは中小の事業所には煩わしい。
 ISOの手続きをより簡素化し、コミュニケーションを強化しながら独自の工夫を加えたものが、環境庁による環境活動評価プログラム「エコアクション 21」であり、県内でも数社が取り組み始めている。その内容についての問い合わせは、徳島県環境生活部 21世紀環境創造推進チーム 088-621-2209まで。