会議をデザインする


 生きていくことは、「次の瞬間に何をするか」という意思決定の連続である。それは個人、家庭、企業、国家を問わない。意思決定(プロセス)の積み重ねが結果なので、どう「決める」かは大切だ。

 決めごとには必要なルールがある。ブレーンストーミングのように、悪口、批判はしない。他人の意見にアイデアを加えて発展させていくなど、議論を活発かつ円滑に進めていくというのがそうだ。厳しい現実を直視しながらも笑い声が出る会議は生産的な時間である。

 会議に必要な考え方を整理してみたのが下図である。これをみれば、「情報の共有を重視し、自由な発言を確保する」「表面的ではない(対症療法的ではない)真の原因を掴む」「解決策探し」の手順を踏んでいる。

 それには、現場の意見(ボトムアップ)が重要であるとともに、大所高所から見た長期的な方針とのすり合わせ、部分最適化ではなく全体最適化の視点(トップダウン)が融合することが不可欠である。

 ところが会議は往々にして生産的に進まない。それは、政治(派閥)や個人的な感情がからみあい、理屈だけで割り切れない。ならば、それした要素を極力排除するのが議長の役割だろうし、人間感情もすべてをマイナスと考えずに、会議の円滑的運営の前提条件として捉えたい。

 議題に反対しそうな人たちに対し、予め心の準備をしてもらうべく事前情報提供を行ったり、「賛成はしてくれなくても反対はしない。良きにはからえ」の立場になってもらえるよう事前説得に臨んだりする。その人に影響力を持つ別の人からの説得をお願いすることも方策である。

 その際に、会議出席者と予想される立場、意見を「強く反対」「反対」「中立」「賛成」「強く賛成」のように一覧表にする。反対者の事前説得として、相手にとって最悪のシナリオ「どんな困ったことが起こりますか?」を描いてもらい、相手の不安材料をあぶりだす。次に、それに対してどのような解決策があるかを考えてもらう。すると「そこが解決できたらいいんですね」ということがわかる。相手はうなづく。それに対する解決策(できれば相手にとっての利点まで)を提示できれば、「絶対反対」には回らない(理由がない)。

 会議のとき、ぼくは意図的に発言の機会を遅らせる。参加者が何に不安を抱き、何を問題視しているかを知り、それに対する解決策を提示したいと考える。それには、我先に発言して長時間しゃべるよりも、人の話をじっくりと聞いて発言するほうが重みがある。ひとたび意見するときは、ゆっくり淡々と、ときには畳みかけるように感情を込めて相手の顔を見ながら説得を展開する。そうすると、会議の目に見えない力を引き寄せていくことができると思うからである。

 ブレーンストーミングのときは、楽しそうに機関銃のようにアイデアの泉を全開させて繰り出す。意見の集約段階では、理想や夢物語を混ぜてどんどん拡げていき、頃合いを見て現実的で懐疑的な視点で絞りこんで着地させる。その作業がやりやすいということでポストイットが活躍する場面が多い。

 しかし書くことが嫌いな人もいる。ぼくが会議で使っているのは、ジャストシステムの「アイデアマスター」というソフト。これをプロジェクターで壁に映して参加者の発言をどんどんツリーにし、あとで項目ごと整理していく(参考画面参照)。このソフトを使えば、その場で情報共有ができるとともに、ブレーンストーミング的に意見を構築でき、会議が終わるとその場で印刷して結果を持ち帰ることも可能となる。

 こうして会議で決まった方策は、組織の理念に沿ったものであること、全員一致で目標達成に向けて行動することを確認できれば、いい会議となる。


◆ジャストシステムのアイデアマスター
  • 通常版とプロ版がある。プロはガントチャート(スケジュールとの関連づけ)、パワーポイントのようなプレゼン機能が付加されている。
  • 書籍とのセットも用意されている。
  • 商工会議所、商工会、経営支援機関、コンサルタントに便利な道具である。
↓アイデアマスターでつくってみました。毎日使っているソフトです。


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