「テキストエディターのおすすめ」(2000年11月)

文章を書くときはワープロソフト(ワード、一太郎)を使っていますよね。これらのソフトは、印刷に使うための複雑なレイアウトや図や写真を散りばめるための(簡易DTP)ソフトだと理解しています。つまり文章を書くだけなら、もっと軽いソフトが適切です。だからぼくは、報告書や会報の作成以外は、すべてテキストエディタで書いています。

●ぼくがワードや一太郎を使わない理由
(1)プログラムが重い。ワープロソフトで文章を書くのは、戦車で散歩に行くようなもの。
(2)ワードや一太郎は、独自のファイル形式(バイナリーといいます)を取っており、それで作ったデータ(文書)が10年後に読めるとは思われない。
(3)重いとフリーズしやすい。フリーズの被害を最小限に抑えるためには、フロッピーなどに毎日ないしは作成ごとにバックアップを取るとともに、文章の作成中に何度か「CTRLとSを押す作業(保存)が必要。
(4)テキストエディタがなければ、Windowsの場合、テキスト文書を付属の「メモ帳」で読み書きすることになるが、行間が詰まっていて読む気すら起こらない。機能も単純すぎて使えない。

●テキストエディタの優れた点
(1)文章を書く、自在に編集するという点では、テキストエディタのほうが高機能。でありながら、余計なお節介をしないところに好感。
(2)わずか数メガ程度のプログラムなので動作が軽い。あっという間にデータが開くし、スクロールも早い。軽快なスニーカーが快適なのと同じ。同じ文章を保存してもワードや一太郎よりデータがずっと軽いため、記憶装置の容量を節約できる。
(3)テキスト形式なら、OS(ウィンドウズ、マック、リナックスなど)やアプリ(ワードや一太郎など)に左右されず(ワープロ専用機でも)読めるなど、過去から未来にわたって広い範囲で共通のデータ形式となっているため、安心して友人知人とデータを交換できる。
(4)ウィルス感染の心配がない。
(5)文字だけなら印刷も十分にこなせる。
(6)電子メールとの連携がうまく行く。メールマガジンのような比較的長文は、機能的に優れたエディタで作成してメーラー(前回紹介したベッキー)にコピーすることで、作りやすいしパックアップもしやすい。この場合、書式設定をメーラーに合わせておくと、改行処理がスムーズ。
(7)逆にメーラーで受信した文書をテキスト形式で保存するだけで、見やすい画面(目にやさしい背景色、行間、フォント)でじっくり読むことができる。

 それ以外に、ワープロソフトを使わない(個人的な)理由は、縦書きができないことです(原稿の執筆で縦書きは常識なのにね)。試しにワープロソフトで縦書きを試みてください。使いにくいのに驚かれるでしょう。ちなみにぼくが今使っているテキストエディタは縦書きに対応した「QX」(araken氏作)というオンラインソフト。別名物書き御用達エディタとも呼ばれ、3000円で購入できるシェアウェアですが、縦書きが連続スクロールで見やすくもう手放せません。もちろんフリーズも皆無。

 もうひとつだけ。文章を長く書くと目が疲れませんか?自衛策としてブラックTFTを採用したシャープの15インチ液晶を70センチ離して使い、バックライトを落としていますが、白画面に黒文字は鮮明だけど疲れます。QXでは、背景を目にやさしい黒板色、文字を淡い灰緑色に設定(何色でも可)できるので、目にやさしいばかりか、情緒的な文章が書きやすい。友人知人とデータ交換する人、メールの作文が多い人、短いメモが多い人、その逆に小説のような長い文章をを書く人にはテキストエディタは必需品ですね。

 くどいようだけどもうひとつだけ(刑事コロンボ!)。パソコンの歴史とともに膨大な量のテキスト文書が存在する以上、その資産を受け継ぐために将来にわたってテキスト形式は残るだろうし、残ることを求められるでしょう。自分の書いた文章を100年後、あるいは300年後にまで残したいときは(世界遺産ですね)、紙にプリントアウトするのが一番。これはどんなに時代が変わっても元データの復元性が高いことが実験で確かめられています。もしデータで残すときは、テキスト形式でCD-Rでしょうね。それでも100年後には記録が自然消滅しているか、媒体を読み出す機械がない可能性は高いけれど、ここ数十年は心配ないでしょう。えっ、そんな先のことなど考えていない?失礼しました。

 電子メール時代だから、誰とでもデータ交換したいから、末永く残したいからテキストエディタ(わずか3千円〜4千円)を使いこなして欲しいのです。一見地味なテキストエディタですが、リナックスに通じるオープンソース時代のコミュニケーションや開かれた経営のあり方を示唆しているようです(ここまで言い切るのはぼくだけかも(^^)。