「百年の計でまちづくり。徳島市らしさってなんだろう?」


豊かな湧き水の小京都、郡上八幡を歩く

 長良川中流、吉田川が合流する地点に郡上八幡がある。小京都の赴きのあるまちのなか、至るところで湧き水が水路をつくり、水路にはヤマメが泳いでいる。
 まちなかを流れる吉田川の橋から水面までは10メートル。子どもが思い切って飛び込む。最初は岩の上からだったのが成長とともに飛び込み地点は高くなっていく。橋の下は流れのある深い淵だが、誰も遊泳禁止なんて言わない。それでいい。大人の水難事故を耳にするたび、「小さい頃から海や川で遊んでいなかったんだな」と気の毒に思う。

 郡上八幡の良さは、「歩く」「自転車でまわれる」大きさであるということ。道ばたの湧き水で潤しながらふらりと目に付いたお店に入り、しばし和む。いいまちだな、と思う。
 地球温暖化など環境の悪化に伴い、エネルギー効率の良い日本の伝統的な生活に戻ろうと考える人たちが増えている。今回はまちづくりの視点から考える。

クルマに依存しない社会を政策でつくりだす

 人々のにぎわいがあふれ、各種公共機関や都市機能が集約され、歩いて暮らせるまち、高齢者や交通弱者が安全に移動ができるまち。コンパクトシティとも呼ばれるまちをめざそうとする法律が平成18年8月に施行された中心市街地活性化法だ。この法律の認定を受けると、国による補助金などが受けられる。四国では高松市が認定を受けた。四国内では、三好市、松山市、高知市、四万十市、西条市がめざそうとしている。認定第一号となった富山市では中心部の地価が上昇しているという(高松も同様)。

 富山市では、国の補助金を受けてJRの路線を第三セクターが譲り受け、LRT(低床式の路面電車)を走らせた。路面電車は停留所が小さいため、駅と比べて利便性の良いところに数多く設置できる。実際に乗ってみたが、市民の足として根付いていた(乗降客数を政策評価の数値目標として掲げている)。しかも郊外の集落に住む人が中心市街地へ来訪しやすいよう高山本線増便などの社会実験も行い、中心部と郊外をつなぐことを模索。中心市街地の発展が郊外生活者にも利点がある都市構造をめざしている。

 富山市は全国の県庁所在地ではもっとも人口密度が低く、このままでは行政コストが財政を圧迫する怖れがあった(行政サービスを市民に行き渡らせるのに人口密度が低いと効率が悪い)。そこで中心市街地の活性化をめざして思い切った施策を行ったのだ。

供給の論理ではなく、ニーズから考える

 中心市街地の活性化というと、官民による大規模な再開発を考えがちだが、行政の視点からは、住民ニーズを見極め、条件を見定めて政策誘導する手法が重要である。どんなまちにしたいのか、どんなひとに来て欲しい、住んで欲しいのかを考え、その人たちはどんなニーズを持っているかを吟味する。

 例えば、シニアや退職後の団塊の世代のIターンをねらうとする。ニーズを把握し、必要な条件をクリアすれば、固定資産の減免措置や個人への補助金交付を行う。供給の視点ではなくニーズの分析からあるべき姿を見定め、まちづくりを政策誘導をする。

 このように住民を主役に据えた行政の都市経営理念が重要である。それがあるかないかで、ますます都市間の格差が広がりそうである。

徳島市では…

 映画「眉山」で徳島の良さを再認識した人たちも少なくないだろう。大河吉野川を北方にひかえ、まちなかを縦横無尽に水辺が連続する徳島市は、4県の県庁所在地でもっとも魅力的。遊山箱をめぐる人々の交流など、ほのぼのとした文化が立ちこめる。日常的な路線として水上公共交通が利用できれば、川面から都市を眺めながら渋滞なく移動できていいな、などと思ったりする。

 そんな徳島市に音楽ホールを軸にした新町西地区再開発が持ち上がっている。しかし住民からは景観の問題、ホールの質、テナントミックスが音楽文化というコンセプトにふさわしい内容になっているかどうか疑問の声が上がっている。

 ならば、さまざまな人たちの真摯な議論を取り入れる場を設け、企画の段階から市民が参画し、時間をかけてコンセプトを再構築してみてはどうかと考える。

 住民も意識レベルを上げていきたい。モノ余りの時代、郊外に大型集客施設が必要なのかどうか考えてみたい。幹線道路の渋滞や周辺の環境悪化、時代に逆行して地球温暖化、クルマ依存の社会を推し進めていくことの是非について。
 さらに困ったことは、こうした広域商圏の施設は、県内各地のまちの構造を破壊してしまう。かつては身近にあったお店がいつのまにか生活圏から消えてしまい、買い物が不便になるなど、周辺市町村で交通弱者の生活の質が低下する。パイが増えるわけではないので、さびれて廃墟となる商業施設がないとも言い切れない。

 大型商業施設の誘致は行政として固定資産税増加のうまみはあるのだろうが、それと引き換えに中心部の空洞化が進み、資産価値が下落する。

 中心市街地活性化基本計画の認定を行う内閣府でもっとも重視しているのが「その都市らしさ」「独自性」といわれる。もちろん国の認定を受けるためにまちづくりを行うものではない。もし、全国一律の基準(法律)が地域の実情に合わなければ、身の丈に合ったローカルルール(条例)を制定して規制を強化することもできる。その逆に、あるべき姿に向かわせるための誘導や規制緩和をすることもできる。

 まちづくりは百年の計、徳島をどんなまちにしたいのですか?

 

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