地域から全国へブランド展開〜その1「差別化」

 徳島から全国へブランド発信を行おうとしている伝統産業の企業がある。実は、高知の同業者で三越をはじめ全国各地で販売されているブランドがある。その事例を社長とともに研究してみた。

 地域から全国へブランドは発信できるのだろうか。マーケティングコストがかかりそうだが、結論から言うと(コストをかけずとも)「できる」。前提条件は3つある。
(1)独自の商品がある。
(2)成熟した分野であって、しかも差別化に成功している。
(3)商品と顧客を結ぶ心の絆(感動)がある。

 これだけの前提があって、商品やサービスの独自性を記号化するのがブランド戦略なのだが、それらは、ロゴ、商標などのブランドアイデンティティや広報活動がある。つまり事業所側が情報をコントロールして、イメージをつくる作業である。前月でも述べたが、「(商標名)といえば、○○○」の○○○に入る明確なイメージを生活者に描いてもらわないと価格競争から逃れることはできない。

 また、ブランドが信頼の証となるためには、実際にブランドを購入して気に入ってもらうという体験の裏付けがなくてはならない。そのためには、試供品提供やお試し価格などの敷居を低くしたり、グループインタビューやアンケート調査などの生活者の声に耳を傾けるしくみを設けたり、イベント、情報提供や相談、アフタサービスなどによる信頼関係の構築などを複合的に組み合わせる(CRMと呼ぶ)。つまりブランド戦略とは、差別化(独自の土俵)と顧客コミュニケーションの連携によってつくられる。

前提となる成熟市場における差別化について

 住宅市場を例に取ると、家は30年に1回の建て替え需要と言われている。新規住宅着工数は減少しており、市場は成熟している。それを再び成長産業に戻すために、リフォームという切り口が考えられた。お金をかけずに大変身させるテレビのリフォーム番組もゴールデンアワーに設定されている。単なるリフォームではもはや差別化にはならない。
 そこで、独自の土俵とはなにか、それを顧客に伝えてファンになってもらうコミュニケーション戦略とは何かを考える必要がある。
 独自の土俵とは、強みであり、イメージが明確に描けるものである。当社は「家庭内ミニビオトープの施工ができます」「バリアフリーの床材をムク材でやります」「階段の手すりを取り付ける専門店です」などのように、絞りこんで提示すると、差別化が図れて成長軌道に載せることができるようになる。
 あるいは、「30年に一回ではなく、三世代が住み続けることができるいい部材を使ったほんとうにいい家をつくろう」と生活者に啓発するのも方法。坪単価ばかりを追いかける生活者に対し、プロフェッショナルとして伝えたいことはたくさんあるはずである。
 地場の工務店や施工業者のライバルである大手住宅メーカーは、かゆいところに手が届く営業手法(言い換えれば、営業コストを住宅コストに転嫁しているのだけれど)がウリであるが、絞り込んだ具体的な提案と地域密着のコミュニケーションにより、地場の業者は優位に立つことができるはずである。
 住宅建設や土木建設業界の不振を見るたびに、独自の土俵をつくることの大切さを痛感する。


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