2秒で決まる〜顧客価値を凝縮するその瞬間


そう言われると、「ああ、そうだろうな」と思えることに、2秒の法則がある。人は物事をぱっとみて、なんとなく決めている、しかもそれはおおむね間違っていないという。

 経営において考えてみると、営業マンの好感度がある。以前、クルマを買おうとして訪れた営業所の営業マンがしっくり来ない。熱意はあるのだが、なんだかわずらわしい。見積もりを書いてもらうと期待はずれ。こちらとしては、気に入っている、買う意思があるという態度を見せているのだから(しかも時間がないことを告げている)、あとあとの値引きの余地を残すような金額ではなく、実質的な提示をして欲しかった。

 結局、そのクルマを別の営業所(つまり別の営業マン)で買ったのだが、そのディーラーは特に目立った過失がなかったにも関わらず、顧客ニーズを把握できなかった営業マンによって顧客一人とその売上を失ったことになる。

こうした所作を心理学的に解説した書籍も出回っているようだ。まだ読んだことはないが、察するに視線の置き方、声の調子、唇の表情(両端を心持ち上げる感じが良いのだろう)、その人に合う髪型やネクタイ、服装、靴。話すときの表情や抑揚などが渾然一体となって他人の目に映りながらも、それがぱっと判断されるのだろう。仕事においての心理は、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい、ということ。だから朝の笑顔の練習は欠かせない。

店舗や営業所に入ろうとしたら、整理整頓ができていない、清掃ができていない、窓ガラスが磨き抜かれていない、トイレが汚なければ、「売れていない」「誠意がない店」「見かけは立派でも中味がない」などと瞬時に顧客に判断されてしまう。飲食店や菓子店であれば、窓が汚れている→調理場も汚いだろう→商品も不潔だろう→売れていないだろう→買わないという感情の連鎖が起こるかもしれない。

情報発信とて同じ。Webサイトやチラシなど、ぱっと見て好感を抱かせないもの、なにをいいたいのかわからない(自己満足的)もの、陳腐化した表現。例えば、「こだわりの〜」「匠の技の〜」など5年前なら良かったかもしれないが、いまは顧客がそっぽを向いてしまうぐらい社会に氾濫している表現だ。それを平気で使っている事業所はないだろうか?

2秒で判断されるということは、視覚的に瞬時に判断されるということであり、そこを意識した情報発信を行うとすれば、写真(またはイラスト)+キャッチコピーの組み合わせとなる。現代人は、朝起きてから夜寝るまで、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネット、口コミ…と情報の洪水のなかで生きている。

だからまず最初に「おやっ」と思わなければ、中味をみようともしない。だからキャッチコピーには充分気を配る必要がある。

情報発信の段階ごとに考えてみよう。


写真とコピーは、場合によってはプロに頼むのもよい。けれど、どこにプロがいるのかわからない。料金も高いかもしれない。できれば自分たちで考えたい。そんなときのために、キャッチコピーをつくるツールを考えた。


事業所を訪問して、社員、スタッフとわずか10分のブレーンストーミングを行うと、あっと驚くような秀逸なコピーが出てくる。ポイントは、「価値」を見つめる視点だ。
その商品は、なぜ買われるのか? どうしてほかにもあるのに、それが選ばれるのか? それはどんな理由(強み)があるのか? こうしたことを自問自答しながら、そこを強調するような写真、文章でないと、いくら写真を取る腕、文章を書く才能があったとしても空回りだ。

事例は、夏場に売上が落ちる菓子店で、POPを作成したもの。商品名はスーパーにでもありそうな商品名だったので変更し、デジカメで撮影した写真にフォトショップでキャッチコピーを入れた。楽天などのネットショップでよく売る店をよ〜く観察すると、みんなこの手法である。このPOPは、売りたい商品4品目に絞ってPOPを作成し、集中して売ることで口コミ、製造ロスの低減など夏場のカンフル効果をねらったもの。

徳島県内で、「あっ、これはいい」と思うキャッチコピーがあったので紹介する。さとうガラス工房というインターネットでガラスエッチング商品を販売している阿波市の事業所。「大きくなったあなたも大好きだけれど、小さかったあなたを忘れない」(いいですね。心の琴線に触れる作品だと思います)。

情報発信には、直感型とは別に説得型もある。次回にでも。

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