知的な生産活動の選択〜キーボード
パソコンのいのちはキーボードにある。パソコンは知的生産活動に使うものであり、そのために人の手による入力作業が必要となる。ところが、キーボードはどういうわけか、使いにくい配列が事実上の標となっている。にもかかわらず、多くの人は、買ったときに付属するキーボードに何の疑問も抱かないのではないだろうか。

QWERTという英語の配列は、半世紀以上も前のタイプライター時代に考案されたもので、それもわざわざ速度が出ないように配列してある。キーが重く、かつ押し込む距離が長いタイプライターで早打ちすれば、腱鞘炎になるおそれがあるからだという。

そんなことから、英語圏では、パソコンのキーボードにふさわしい、文字の出現頻度を考慮したキーボード配列が考案された。これだと、早く打つこともできるし、速度が同じであれば疲れにくい。それをDVORAK配列という。

実はDVORAK配列では、ローマ字入力による日本語も打ちやすい。なぜなら、よく使う子音が左手のホームポジションに並んでいるからである。

ただし日本語は、ひらがなで入力するのが自然である。ローマ字入力と比べて打鍵回数(同じ文字を打つのにキーを叩く回数)が減り、脳の思考を妨げずに作文に集中できるという利点がある。

日本語をひらがなで入力するために最適化された配列として実績があるのはNICOLA配列である。かつてワープロ専用機の全盛期に早打ちコンテストの上位入賞者はことごとく親指シフト愛好家だった。NICOLAは、富士通の親指シフトを(メーカーを離れて)標準化したものである。

ぼくが使っているリュウド社のキーボードはこのNICOLA配列に準拠したものだ。ほとんど話す早さで打てるが、早打ち向きというよりも、無理なく自然に打てるところがいい。このホームページの途方もないテキスト量はいったいどうやって打ったのかと思う人もいるかもしれないが、なんの苦痛もなく、すいすい打っている。

キーボードで大切なのは、キータッチ、キー配列、汎用性であり、それをつくる側からすれば、コストダウンである。理想のキーボードができても手に入りやすい価格で発売できなければ普及しない。

キータッチについては、いい部品を使うことしかない。入力という作業を楽しくするために、コストダウンしてはならないところである。しかもいい部品は耐久性も高い。

配列について、英語はDVORAK配列にしよう。これだけで英文を主に打つ人は歓迎するだろう。さらに和文のローマ字入力も快適になる。ひらがな入力する人のためには、日本語はNICOLAに準拠した配列が現実的だろう。そうしてキーボード全体を疲れにくい仕様にするために、エルゴノミクスなどの合理的な形状にする。

キーボードの開発にはかつて億のお金がかかるといわれ、中小メーカーには歯が立たなかった。しかも市場は限られている。いくら悪いキーボードでも最初から付属しており、、それに大勢の人が慣れてしまえば、あえてそれなりの金額を投資してキーボードを買い換えたいと思う人は少ない。悪貨は良貨を駆逐する。

しかしこうした難題に挑戦しようと事業化を試みる人がいる。企業秘密なので詳細は公開できないが、開発が進捗し、ご本人の了承が得られれば、開発商品についてお知らせしたい。これを使うと、パソコンの前に向かうのが心弾むようになるかもしれない。
(8月26日)

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