絞りこんで政策提言をする〜破たんのない理論、心理学そして感性による選挙戦略
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候補者にとって、独自の土俵をつくることが必要だとぼくは考えています。そして地域のオピニオンリーダーに支持され、そこから横のつながりやその人たちの影響力で拡げていくことで、態度を決めかねている人たち、情報を咀嚼できないでいる人たちに働きかけるのです。 博報堂総研の生活予測では、こんな観測があります。(以下、抜粋して要約) 同生活予測2003年版によると、「非同期 -シンクロをやめると時間を多層的に使える」と紹介されています。要約すると、人々が「いっせいに」ではなく「めいめいに」ということです。 いままでの日本の社会は、さまざまな動きが同調して動くことで効果を発揮してきました。しかし4つの要因から、これからは、同期して働く社会よりも非同期に動く社会になりつつあることを予測しています。 その4つの要因とは、 (1)情報量の増大に「時間の多層化」で対応せざるを得ないということ。 (2)生活者が「時間に縛られない関係」を望み始めていること。 (3)決められた時間から解放された「退職者という巨大集団」が増えること。 (4)そして、いまの閉塞状況が過去の同期して動く社会に起因していることから、非同期に動く「試す力」が求められている。 携帯やHDDビデオなどの新しい蓄積型情報機器の利用で、増加する情報量に対応しているということ。人とは違うことをしたいシングル度の高い人が増加しているので、これからは「いっせいに」することを嫌がる人が増えてくるということ。超高齢化社会の到来で、時間に自由な退職者という大きな集団がやってくるということ。そして、政治、経済、教育、行政などいままでの同期型の方法論が行き詰まり、非同期的にトライする新しい力を社会が望んでいるということから、「非同期」的生活がクローズアップされてくる。(以上、要約引用) 難しそうな話ですが、ぼくがここから受け取ったメッセージは、地域とのコミュニケーションによって、生涯にわたって自分のファンとなってくれるような人たちをつくり、その人たちの意見を聴きながら、「こんなくらしはどう?」と提案する。いわば、候補者の顔(イメージ)ともいうべき「独自の土俵」を準備する。イメージが明確になることで、わかりやすさ、共感しやすさが生まれ、口コミや投票行動に結びつきやすいと思えるのです。もちろん選挙戦に入る前に、種を蒔く畑が耕されていることも必要でしょう。 選挙戦では、「思い」「理念」「政策」という根っこを確立したうえで、短期間の選挙戦に必要なパフォーマンス(華、見映え、わかりやすさ、覚えやすさ、五感に訴えるビジュアルなど)を準備すること。根っこがあれば、浮ついた感じにはなりません。例えば、ワーグナーの歌劇やプロレスではありませんが、演説や街頭宣伝の際に自分のテーマ(音楽)を決めて流すこと(既成曲なら著作権をクリアする必要あり)。「あっ、あの曲は、あの人だ」という感覚。破たんのない理論と感性的な要素の両面が必要になってきたのではないでしょうか。 さらに3つの方針を考えてみました(あくまで選挙経験がない人間の机上の空論です)。 (1)提示する政策(訴え)は、思い切って絞りこむ ・環境を重視するのは当たり前としても、ある候補者は、子どもの将来を明るくする政策に絞りこむ。 ・別の候補者は、これからの団塊の世代の人たちの受け皿となるようなNPOの整備や地域通貨、ケーブルテレビを活用したコミュニティビジネスを推進する。 ・さらに別の候補者は、行政や政治の意図に左右されない身分と独立が保証された環境アセスメント等の研究機関をつくるとともに、環境NGOを支援する組織を創設し、金銭的な支援、間接事務作業の補助、人手のマッチングなどを図る。 ・またある人は、農業の活性化のために、直売所を設け、マーケティングの勉強をし、脱市場化による、流通から小売までを統合し、そこから地域の給食提供と都市との交流を含めた地産地消マーケティングに落とし込んだ「食と農の再生プラン」を提示するなど。 ・あれもこれもと受け身にならずに、思い切って自分のやりたいこと(=夢)だけに絞って有権者にぶつけてみることも必要なのではないでしょうか。。 ・なぜなら、万人受けるする政策は印象に残らない(口コミに結びつかない、投票行動に結びつかない)けれど、100人のうち3人に熱烈に支持される戦略は、残りの90人ぐらいもなんとなく悪くないと感じるのではないでしょうか。 (2)使い古された言葉は避ける(言い換える) ・「ムダな公共事業を止めて…」という言葉は、ここ10年ぐらいで使い古され、陳腐化しています。「派手な公共事業よりも心のこもった公共事業」「失敗すると元に戻せない公共事業ではなく、そのときどきの需要に合わせて何度でもやり直せる公共事業」「クルマが喜ぶ公共事業から、歩行者が安心して歩ける公共事業」など、地域のニーズやそのときの雰囲気でいくらでも言い換えられるのではないでしょうか。語感の新鮮さにこだわることは大切と思います。 (3)かみ砕いて実感できるように表現する、具体的な行動(プロセス)を落とし込む ・例えば、「環境の経済の両立」から、「百年後もそこで住みたいと思える地域づくり」、「生活者主権」から「あなたも地域をつくる人、みんなで意見を言ってかたちにする社会」など。 ・あるいは「くらしに必要な身近な公共事業を増やす」ということの意味について、「大きな工事はやらないけれど、小さな工事をいっぱいします。だから、地域に合った活性化のプランをみなさんと一緒につくります。でも、もしかして各地区の利害が対立することがあるかもしれません。みなさんの意見が一致しないこともありうるでしょう。そんなときに、わたしは、地域ごとの役割を話し合って決めながら、専門家を招いて勉強会やワークショップなどを重ねながら最善の答えを見つける作業をみなさんとともにやっていきます」となどということまで、相手に伝わっているかどうか。 そのほか、生活者の意識が変わりつつあるという記事で、同じ博報堂総研の調査を挙げておきます。 ◆21世紀の日本-生活者は何を求めているか〜 博報堂生活総合研究所「生活定点」調査 http://www.athill.com/LAB/TARO/taro_72.html このなかにも政策のヒント、選挙のヒントは山ほど隠されていると思います。 ▲戻る |