pure acoustic/大貫妙子〜幸福感にひたひたと包まれて
豊潤なワインがあったとする。そのワインのお供は、ぼくならこのアルバムにする。

空間に波紋を拡げていくピアノ、ピアノのさざ波に乗って歌う声。
飾らない音で紡いでいく有機農法のような仕上がり。

バラードというよりも思い入れたっぷりでなく
ヨーロッパ的というよりも旋律が親しみやすく
外面よりも内面的だけど、決して湿っぽくなく
張りつめた空気のなかから湧き出す泉のような広がりと
光と影のテクスチュアが明滅するようで
幸福感にひたひたと包まれる。

音のいい小型スピーカーで深夜に聴いている。
全曲を終えると、また最初に戻って聴く。
いつのまにか朝の気配が漂う。

「突然の贈り物」がいい。
ピアノの甘美な調べ
淡々と感情を込めず夢幻に漂う、それでいて生身の声
もう時の経つのを忘れてしまう。

いま思い出した。きょう、ぼくは誕生日だ。

(12月18日 3時20分)
 「pure acoustic」/大貫妙子


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