万年筆とキーボード
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春風が吹くと山へ行きたくなる。山というより渓谷。それも陽射しが差し込めるやさしい渓相の川。そこに訪れた春を見つけに行くのが何よりの楽しみ。できれば、釣り糸を垂れてみる。まだサビの残るアメゴの姿は、雪解けの地面から芽を出した福寿草のように初々しい。釣れなくてもいい。 ぼくの書きたい文章が書けるのが春から初夏にかけての数ヶ月。誰にせかされるでない、自分の書きたいことを夢中になって書く。「癒し」ということを実感するひととき。今年は、山里に地元の杉で建てられた隠れ家を手配した。四月に完成する見込み。真新しい木の香りと明るい陽射しが差し込める。電話も入らない場所だから、週末にさらさらと使ってみよう。 このところ原稿を書くのは万年筆。オアシスというワープロ専用機を使う前までは、すべて万年筆を使っていたのだが、久しぶりにペン先を水洗いしてみると書き味が楽しくてやみつきになった。きっかけは、新しい文学図書館で小坂奇石の書を見たことから。 こうなると外出(取材)用の万年筆が欲しくなる。大げさでなく、すらすらと書けてポップな感じで値段は数千円という条件。これに見合うのを探すのはもちろんインターネット。さまざまな人の意見の掲載された掲示板やエッセイは見ていて楽しい。そうして、ドイツ製の二種類に絞り込んだ。ともに三千円でお釣りが来るぐらいの万年筆。 で、いつものようにインターネットで買おうと検索すると、徳島市内に専門店(「アローインターナショナル」)が見つかった。さっそくメールを出し、ていねいな返事があったのでオンラインではなく実店舗を訪問した。社長が的確に選んでくれた製品はいい感じで即決。さらに珈琲までごちそうしてくれるとのこと。急いでいたのでお断りしたが、インターネットがつなぐいい出会いだった。その後、社長と娘さん(専務)を徳島ニュービジネス協議会の「インターネットビジネス研究会」の勉強会の講師にご紹介した。誠実なお二人である。 店先で購入したのは、世界中の学生に愛用されているラミー「サファリ」。なかでも最近出たスケルトンボディはかっこいい。インクはもちろんロイヤルプルー。これでさらさらと取材している。今度は、国産のセーラープロフィットの21金「中細」を使ってみたい。 キーボードは、配列が日本語に最適化された親指シフトを使っている。文章を書くのなら、パソコンにお金を投じるよりもキーボードにお金をかける(OSならWindowsなら2000がいい)。今使っているのは新潟のリュウド社がつくった4万円ぐらいの製品。キーの配列が合理的で、メカとしてのキータッチが軽いから、ディスプレイに現れる文字が脳のスクリーンと一体化したような感覚で次々と文字を定着していく。これなしでぼくの仕事と遊びはありえない。残念ながら生産中止となっているけれど。 イトーキからレビーノというイスが出た。後ろにリラックスして頭を預ける事務イスで10万円を越える製品だけど、思い切って注文した。液晶ディスプレイは、光興業の2万円程度の製品を使っているが目が疲れにくい。ワードは仕事の報告書を書くときのみ。普段の文章書きは、縦書きもできるQXというテキストエディターを深緑の背景色にして使っている。見やすくて目の疲労が抑えられる。 ハコやメカ、クルマにいくら投資してもそれはぼくの顧客の利益にはならない(ぴかぴかの事務所は単なる自己満足)。それよりも的確な課題の把握やわかりやすいプレゼンテーション、具体的で実践的な提言というソフトの中味が大切。 コピー機さえ置かない狭い事務所だけれど、ほんとうに大切なものには重点的に投資する。ぼくにとって前述の道具類は仕事の成果に直結する。そのことが顧客の利益につながると思うから投資した。 自分の強みを徹底的に磨く。資産とは、まんべんなくあれもこれも投資することではなく、ここと決めた領域(目標を達成するためのプロセス)に重点的に資源を投下して形成されるもの。意識して実践したい。 このところ、意識して生活に変化をもたそうとしている。春はそのきっかけ。そうそう、夏川りみのセカンドアルバムも今月中に出る。新しい学年を迎える学生のような不思議な2003年の3月である。 [テキストエディターQXは物書きの道具とも言われています。下図は縦書き画面の例。一ヶ月の試用期間で満足されたらぜひ3千円を払って引き続いて使ってみてください。もちろん一般的な横書きの設定もできます。→作者のホームページ] ▲戻る |