夜が来ると光る時計
地球型の腕時計を買ったのが十数年ぶり。仕事場の棚にひっかけて地球を眺めながら仕事をしている。

ところが、仕事以外に山、川、海に行くときの時計はなかった。何を買おうかなと思ったとき、アルバのフィールドギアが思い浮かんだ。フィールドギアは生産中止という噂もあり、事実アルバのWebサイトには掲載されていない。近所の時計店で発注したものの、入荷まで2週間近くかかった(価格は税込みで12,000円)。

この時計は、(セイコーでは)ルミブライトと呼んでいる放射性物質を含まない蓄光塗料を全面に採用し、視認性を高めるため数字を部分的に大きくしてある。さらに24針付で時差の計算ができるし太陽が出ていれば簡易コンパスにもなる。ベルトは防弾チョッキの素材で強度と耐久性が高い。ケースはチタンで軽く冬でも冷たくならない。防水性能は20気圧防水で素潜りもできる。なによりくだけた感じなので、気分が変わる。

ルミブライトなので、昼間の光を貯えて夜になると光る。テナガエビ採りに行くとき(今年は行けなかったけれど)、星をみるとき、夜の運転のとき、文字盤がぼーと蛍のように緑に点灯するんだろうなと想像しながら納品を待っていた。届いた今では、自分の部屋でプラネタリウムみたいに眺めることもある。

ぼくは、見知らぬ街を散策するのが好き。行きと帰りで違う道を通って元の場所に戻ってくる。たいがいは脳内方向コンパスが作用してうまくいく。太陽が出ていれば、アナログ時計の短針と12時との角度で方位はわかる。

(アルバ フィールドギアAPBE-201とスント リストコンパス)

でも腕時計にリストコンパスを付けてみるともっと簡単だ。だからフィールドギアの相棒として、スントのリストコンパスを選んだ。

スントは、フィンランドにある世界屈指のコンパスメーカー。アウトドアショップには類似品が並んでいるが、スントのリストコンパスは、北が大きくてわかりやすい。ほかの展示品と比べてみると動きの安定感、俊敏性もいいように感じる。しかも白に黒の夜光塗料でフィールドギアとも合う。だからいつも兄弟姉妹のようにくっついている。

コンパスは、コンサルタントの必携道具だ。現場を訪れたときに、太陽と店舗の関係を知っておくことで、春夏秋冬におけるさまざまな光の条件を頭にイメージできる。小型のシルバコンパス(北欧の専門メーカー)を使っているが、つい持ってくるのを忘れてしまうこともある。

リストコンパスは時計を付ける限り忘れない。曲がりくねった初めての道で、ふと腕に目を落とせばどの方向に進んでいるかがわかる。道に迷うのは、北と南を勘違いするようなときだ。スントのリストコンパスは、自分の正面が北となるようにベゼルを設定しておくとわかりやすい(写真)。
 
登山道がある山なら、シルバコンパスで角度まで読みとる必然性はなく、東西南北がわかればほとんど事足りる。スントのリストコンパスは、21ミリ幅までのナイロンベルトなどに取り付けられる(ぼくが買った店で900円)。

最近のセイコーの腕時計は元気がないように思う。技術的にはシチズンがどんどん新機軸を打ち出しているように見えるが、セイコーはどうだろう。ぼくが持っている前述のThink the Earthの腕時計の歯車は、セイコー盛岡工場の名人の手作りによるものとされている。

仕事で使うのは、シチズンのアテッサ。オールチタンの軽くて見やすくてシンプル。国産でもっとも美しいデザインの腕時計ではないかと思う。チタンの暖かい質感とウォ−ムグレイの落ち着いた輝きは十数年使っているが、飽きない。毎日極細繊維で磨いて光沢を楽しんでいる。

仕事では分刻みのスケジュールだが、時間を意識することなく、時計を意識することなく、存在感を誇示することなく役割を果たしてくれる腕時計たちである。

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