裸で聴く一青窈
一青窈(ひととよう)の最新シングルは3曲入り「大家」。まるで、空間に放たれた一筆書き。

平凡な歌なら、髪を切るBGMに流れていればいい。だけど、一青窈の歌は聞き流せない。彼女自身の歴史というか背景から綿綿と紡がれたとき、ほんとうのところ、本人しか入っていけない世界かもしれない。だけどそれでいい。万人に受ける歌なんて要らない。

「もらい泣き」は多くの人に受け入れられたけど、ぼくにはぴんと来なかった。けれど、このシングルに収録された3曲には心をかき乱される。なんでこんなに硬質なの? 言葉が生まれたてのみずみずしさで殻を破って飛び込んでくる。音楽がぴったりと寄り添いながら。

それは、言葉の持つ魂のふわっとした拡がりを含みながら、言葉が音としてすぱっと空間に放たれる強さ。

感性が剥き出しになった歌だから、ぼくも裸で聴いている。




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