四万十の栗焼酎〜ダバダ火振り
四国の川が好きな東京の人たちが入っているメーリングリストでは、四国の食べ物が話題になることが多い。なかでも、小松島名産のジャコテンとフィッシュカツは少々あぶると絶品だとかで、ひとりで何枚も買っていく(通販)人もいるらしい。

実は、小松島にあるぼくの事務所から歩いて5分ぐらいのところに、有名なかまぼこ店が3店あり、なかでも津久志かまぼこのジャコテンとフィッシュカツが人気だ。

小松島は、四国の東玄関として栄えた港町。なかでも魚を使った練り製品は、四国連絡船に乗る人が必ず買っていったもの。港で竹竹輪を売るおばさんのことを思い出す人もたくさんいるだろう。

ぼくが小さい頃、朝食の食卓に必ずといっていいほど、カツは乗っていた。カツというのは、この辺りで採れる近海魚のすり身にカレー風味の衣を着せて揚げたもの。そのまま食べてもいいが、あぶるとさらにおいしい。意外なところではお好み焼きの具にも。

さて、そのメーリングリストで最近盛り上がっているのが、四万十川流域の栗をふんだんに使った栗焼酎「ダバダ火振り」。

メンバーの数人は四万十川へよく行っているが、そのときに知ったのだろう。東京に帰ってからもそれをあちこちに広めているらしい。一升瓶を1ダース仕入れても、またたく間に職場や仲間内で売れてしまう。ぼくはまだ飲んだことがなかったが、噂によれば、それはまろやかでおいしいと言う。

とあるサイトの説明文では次のようになっている。

日本最後の清流として注目を集めている四万十川。その流域の特産品の新鮮な栗を50%もふんだんに使った本格派焼酎。

普通の焼酎の場合と違って、焼酎酵母を使用せず清酒の酵母を使用しています。米と麦で1次仕込みを行い、その後栗を大量に使って2次仕込みをするという贅沢な生産工程をとっています。またまろやかな栗の香りを逃さないように低温でゆっくり蒸留して醸し出されています。


うーん、これは飲んでみたい。そこで、近所のカレー屋に昼を食べに行き、その足でまさかないだろうと思いつつも、近所の酒屋に寄ってみた。すると、900ミリリットルが一本だけあった。さすが四国だな。人知れずさりげなくいいものがあるけど、四国人すらあまり知らない。徳島から南四国にかけては、そんな場所がたくさんあるけど、観光地にもなっていない。ぼくは、ご希望の人にはさりげなく案内しているけれど、徳島移住希望者が最近ほんとうに増えてきた。

それはさておき、いまは土曜日の昼下がり。内田康夫の「天河伝説殺人事件」(上、下)の単行本を読んでいる。何度も読んでいるのだけれど、内田康夫のなかでは、これが一番おもしろい。そして用意したのは、もちろんダバダ火振り。

まずは、氷を入れたストレート。舌のうえで転がすと、プリンのような甘い香りが漂い、なんともいえない心地になる。この飲み方がもっとも堪能できるんじゃないかな。続いて、素材の味を生かす水「きとうむらの山の湧き水」で割る。この水は、山仕事に疲れた男たちが偶然山中で発見した泉の逸話に基づいて数年前に有志が創作して再発見したもので、この水を飲めば、山仕事の疲れが取れるという。値段は普通のミネラル水よりやや高価だけれど、ぜひお試しください。

さて、水割りのダバダ。まるでなにごともなかったかのように、からだに吸い込まれていく。滋味あふれる水の小宇宙のほんのりとした飲み心地とほのかな甘い栗の香り。時間がぼくに寄り添った感じで次々とページがめくられていく。

いい芋焼酎と泡盛、それにこの栗焼酎があるから、もうビールは買わない。


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