- 時間さえあれば本を読んでいる人のために、これまで読んで良かった本を挙げてみました。
- なぜ良いかについて書いていきたいのですが…(少しずつでも)
- とりあえずはアマゾン書店へのリンクを貼ってあるため、レビューをお読みいただいて判断材料とすることはできます。1,500円以上なら送料無料で購入することもできます。
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[今月の紹介]
「身体意識を鍛える」(高岡英夫著)
ゆるめること〜身体意識をつくる
相反することを求められて、それがうまくできる人がいる。楽に目標を達成するばかりか、その過程を楽しんでいるようにも見える。
そんな人は、「信念があるが、融通無碍」「しなやかだが折れにくい」「微笑みを絶やさないが、厳しいときには頼りになる」。会議では「ホンネで話しながら決してひとを傷つけることなく創造的にリードする」「細かいところに気が付くが、大所高所から物事が見えている」「問題点がたくさんあっても気にならない。しかし肝心要の課題だけは解決する」。外出時に少しでも雨が降る可能性があれば、「振らないだろう」と楽観しながらも雨に備えて傘を持っていく人であったりする。
理想的な人は、このように二律背反することをしなやかに、しかも的確にやってのける。そうした能力はどこから来るのか、どのように獲得するのかについて、運動理論から興味深い実践報告がある。
運動科学総合研究所を主宰している高岡英夫氏によれば、人間の身体は、約200の骨と約500の筋肉から構成されているが、そのなかでほとんど役割を果たさないばかりかブレーキになっている筋肉もある。理想は、すべての筋肉が少しずつ協力して身体を加算的に動かしていくことで、鋭くしなやかな動きを得るというもの。その典型がイチローで、大リーガーのなかにあって、あの身体で一流の打球の速度、レーザービームといわれる正確で鋭い送球、すぐにトップスピードに達する走塁などが説明できるという。
筋肉隆々でブンブンとバットを振り回すバッターがいたとする。カチコチに力を入れているが、インパクトに鋭さを欠くこともある。これに対してイチローは、打席に入る前には軟体動物のようにくねらせていて身体を弛緩させている。緩んだ身体の機能が、ぴしっと電気が走るように統制されて運動機能が高まる。高岡氏は、「ゆるめる」ことの大切さを説いている。「緩める」ことを意識して行うことができればどうなるのだろう。
もし人間が少ない筋肉を上手に使いこなせれば、快適な生活ができる。それは、身体意識の使いこなしであるという。しかも肉体ばかりか精神的にも快適だという。
ぼくは上記の書籍を読んで納得できた。文中には7つの身体意識に関する採点表があるが、それによると、ぼくは「センター」という意識が発達していることがわかった(25/25)。確かに動作がぴしっと決まり、軸がぶれない。動きの途中でもどこか静止しているような、動いているときに時間が遅くなって自らの動きを楽しんでいるようなところがある。
水泳をすれば、泳ぎ初めてから速度が上がっていくが、身体はむしろ楽になっていく。ただし1キロを10分台で泳ぐようなことはできず絶対的な速度は速くない。でも魚のように水になじみ、空気が無意識のうちに体内に取り込まれる感覚を覚える。だから、プールよりも海や川へ身を置いたときに水を得た魚のようになれる。
さまざまな経験を経ようとも、基本的な生き方は、10代の頃から変わらない、ぶれないのも「センター」の機能なのかなと思った。
このほかの身体意識では、「中丹田」「リバース」「裏転子」もAクラス(20〜24/25)だとわかった。「エレベーターよりも歩くほうが楽」というと、キョトンとした顔をされることもあるが、これも身体意識をある程度使っているからだと思う。
身体意識をどうつくるかについての高岡氏の研究はすばらしいと思う。もっと楽に強く生きてみたいと思う人は、日常生活に取り入れてみてはと思う。この本のなかでは、柔道の山下泰裕の強さ、ゴルフのタイガー・ウッズの正確なショット、歌舞伎役者の六世中村歌右衛門の舞台姿の妖艶美など、古今東西を問わず、すぐれた人材に共通する身体意識について触れられているのも楽しみ。具体的に身体意識をつくるためのトレーニング法も紹介されている。スポーツをするためだけでなく、心身を楽に生きるためにもおすすめしたい。
「ビジョナリーカンパニー2 〜飛躍の法則」
この不況期を乗り切るのはリーダーシップだとぼくは思っていた。けれど、次の本を手にしてからその考えは変わった。
この本は、それほど顕著な業績を残していなかった企業が、ある分岐点を境に永続的に発展してきた様子を注意深く選んで分析した結果を記したものだ。これまでの経営書といえば、GE、IBM、インテル、ウォルトディズニー、ヒューレットパッカード、P&Gなどのように当初からの超一流企業が多かったが、本書が研究事例にしたのはそのような企業ではなく、一見地味な企業である。しかし前述の企業を上回る実績を残している。
成長の原動力となる経営者については、外部からセンセーショナルに迎えるよりも、内部昇進の堅実な経営者であるという点にまず驚かされる。しかも「万事に控えめで、物静かで、内気で恥ずかしがり屋ですらある」という点。
次に、人を選び、そのあとに目標を設定するという手順。理念と戦略を示し、人材を育成するというのが通常の手順だが、そうではなく、「適切な人をバスに載せ、不適切な人をバスから降ろして」からどこに向かうべきかを決めているというのだ。
そのほかにも「厳しい現実を直視するが勝利への確信を失わない」とか「規律の文化」などといった切り口にも驚かされる。
しかもこれらは、述べ十年にも及ぶ調査グループでの綿密な分析の結果導かれたもので、決して著者の頭のなかで構築した概念的なものではない。
著者は、この調査から得られた枠組みを適用できれば、どんな企業でも地位と実績を向上させる(偉大な組織)となりうるとしているのである。
「技術にも自治がある」
知人の書いた書籍の紹介である。大熊孝さんは、新潟大学の教授で河川工学が専門である。
出会いは1994年に遡る。筑紫哲也、本多勝一、近藤正臣らパネリスト陣の一人として、フォーラムを開いたことがきっかけだ。このときの模様は、実は一冊の本となっている。山と渓谷社から発刊されている「未来の川のほとりにて」。ぼくも編集に関わった。
さて「技術にも自治がある」に話を戻そう。この本には、「治水技術の伝統と近代」という副題が付いている。しかし技術の解説というよりも、人と川との関係という社会面に焦点を当て、随所に大熊先生の定義やキーワードを散りばめられている。わくわくしながら読んでしまった。
大熊先生の川の定義はこうだ。「地球における物質循環の重要な担い手であるとともに、人とって身近な自然で、恵みと災害という矛盾のなかにゆっくりと時間をかけて、地域文化を育んできた存在である」。
人と自然の関係は、矛盾を抱えながらもうまく付き合っていく。現実を見据え、人と自然との関係性から未来を説く。河川工学というよりは哲学、理念であるのだけれど、心なごむ。
大熊先生は遊び心と真剣勝負でこの本を書かれたのではないかと思われる。随所に散りばめられた箴言は決して押しつけがましくない。でもそんなゆとり、余裕の背後に、これを伝えるのが使命という気根を感じる。
仕事で疲れたときにはこんな本を読みたい。財務や情報発信? それも大切だけれど、ときどきは人生を貫く筋を確認したい。この本には、仕事で川と関わりながらも、ときに建設省(国交省)にも鋭く踏み込むなど、良心をかけた骨太の生き方がある。と同時にやわらかい感性がある。理念のない人生なんて楽しくない。感性がふくらまない生き方なんてつまらない。
山と人の未来形を描いた「森にかよう道」(内山節著)も一読してみては?
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