西表の海に浮かぶ星
夜半過ぎに樹幹に鳴く声の主が気になって民宿を出る。民宿前の浜から空を見上げると星がたくさん出ていた。天文学を志したぼくでも星座のかたちがわかりにくい。北斗七星が指さす北極星の高度が低いことに驚いた。南半球から星空を眺めたことはあるが、北半球のこの緯度から眺めたことはない。西表なら南十字も見える緯度である。高知県からでも南十字の北の星はかろうじて見える。

空を見るのに疲れて視線を降ろしたとき、波おだやかな夜の海に星がきらめいていることに気付いた。夜光虫が光っているのだと思ったら、空の星と水平線で対称の位置にあった。星座が水面できらめいていた。

与那田川の河口付近のマングローブまでたどりついたとき、さらに鮮やかに星々が水面に映し出されていて息を飲んだ。これを見るだけで西表へ来てよかったと思う。夜のけものの声が響く森で宇宙と向かい合っている。空を映し出した水面にきらめく光景は、人工光のない暗い環境と波静かなマングローブの広大な入江がなければ成立しない。エコツーリズムの先進地西表島だから、海の星を見るツアーを加えてみてはどうだろう。

(星を映し出していた与那田川 撮影時は早朝)


(与那田川の畔につないだ舟)


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