水郷水都トップへ戻る 水郷水都全国会議・徳島大会の要約
 灯りが消された会場は開演を待つばかり。8月3日午前10時少し前のことである。暗闇のなかに鮮やかな青で文字が浮かび上がる・・「吉野川のほとりへようこそ」。いよいよ始まった!スクリーンに大写しになったのは吉野川を撮影している写真家荒井賢治さんの作品。その映像に合わせてピアニスト河野さんの手から紡がれる即興曲。弾むアルペジオから滔々とうたわれる旋律が、白波の立つ早瀬から黄昏の河口まで千変万化する時間を追体験していく。地球に訪れた10分間の至福のとき。三木睦子さんがあいさつをされた開会式のあと、分科会の幕は切って落とされた。    
      
 注目を集めた第1分科会「川と市民」は、吉野川第十堰を話の中心に据え、市民参加や情報公開を話しあったが、第十堰を讃える全国の声に励まされた思いがした。     

 第2分科会「川と山村」では、ダムに翻弄される山村の苦悩が叫ばれたが、未来の中山間地域に向けて新しい試みが始まっているとの実践報告もあった。          

 合併浄化槽の普及について議論が繰り広げられた第3分科会では、身近な水とのかかわりのなかで、水循環、水質浄化を見据えて、まちづくりの可能性にまで話題が及んだ。
  「川と技術」と題された第4分科会では、近自然河川工法の可能性が追求され、その貴重な施工例が現場の技術者から報告された。

 午後から河口干潟を訪れた第5分科会「川と生き物」では、実際に吉野川の豊かな生態系に接し、アセスメントの重要性や計画段階での住民参加が必要との思いを強くした。

 河口堰の水質を検証した第6分科会「川と水質」では、各地で問題になっている事例報告の後、水質基準や長良川河口堰の矛盾点などをめぐって熱弁が繰り広げられた。

 全体会の目玉はふたつ。川問題の先進地南フロリダからオーメン博士が招かれ、日本生態系協会の吉屋氏の通訳のもと、スライドを交えて報告がなされた。直線化した川を元の曲がりくねった自然の川に戻し、そこにあった「生態系を復元」するという気の遠くなる作業が現実に行われていること。その過程で市民参加や情報公開がどれほど大切かを学んだということ。それは、関係者の電話のメモまで公開されているという徹底したもので、そこに日本の川の未来を見る思いがした。

 続いて哲学者梅原猛さんが「川と日本人」と題して記念講演。しかしそれは鬼気迫るもの。1万年前に芽生えた農耕、そして18世紀の産業革命と、人類は二度にわたる革命を経験したと語り、これからの文明は「初めに自然ありき」「吉野川の河口堰はやめよ」と主張。参加者の拍手を誘っていた。         
 総括討議では三日間の成果を振り返り、論議と実践をいっそう深めていこうと結んだ。