健康「粗」ビジネスっていいよ


 上勝町では、おばあちゃんの手による素朴で気取らない健康的な粗食を町内の温泉で提供すべく準備を進めていることを以前にお伝えした。飽食の現代人には少量の一汁五采はぴったり。しかも「お膳」と呼ばれる一人分を載せる生活の道具に盛りつけて出す予定。こうした昔ながらの道具は人のつながりを感じさせる。しかも地元のおばあちゃんの笑顔を添えて出されるのなら、LOHASな人なら行ってみたくなる。

 香川県の観音寺の道の駅では、早期退職して自給自足の夫婦がつくる瓶詰めが話題になっている。商品名は「あんまりだー」という。地元で採れるイリコ、ニンニク、味噌を調合したもので、いつ行っても品切れとの声もある。人気の秘密は、地元の素材を絶妙の風味でまとめあげたところにあるが、固定費はかからないと推察する。四国農政局の資料を抜き書きしてみた。
 おにぎりやおでん等に相性が良い赤みそ仕立て「和食の友」と、野菜のスティックやサンドイッチ等と相性が良い白みそ仕立て「洋食の友」の2種類がある。
 原料の入手に当たっては、地元産品(旧3市町の特産品)にこだわっており、いりこは観音寺の卸問屋から直接購入、にんにくはJA豊南や地元生産農家から直接仕入れている。みそも地元で製造した赤みそ・白みそを使用している。原料の煮干しいりこにはカルシウムが多く含まれ、にんにくには殺菌・抗菌の効果、抗血栓・抗酸化作用があり、みそにはコレステロールを低下させ動脈硬化を予防したり老化を防止する効果があるといわれる。購入者からは「あっさりして美味しい」とリピーターとなる人も多い。販売は道の駅や高速道路のサービスエリアで行っており、小瓶140g399円、大瓶200g(和食の友のみ)630円で、月約600個程販売している。
 高松在住の女性起業家による自然素材の石けんを製造販売するビジネスが、ビジネスプランを競うドリームゲートという大会で賞を取ってしまった。(有)藍色工房の板東未来社長はピアニストであったが、環境破壊でピアノに使う良質の木材が少なくなっていることから、環境と地域に貢献するビジネスをしようと思い立った。それが石けんなのだが、山川町の藍を混ぜた製品などが代表的な製品である。自分自身の利益よりも地域活性化にこそビジネスの魅力があると語る彼女の理念に拍手を送る人も少なくないだろう(実は、徳島で彼女の講演会を行うことも企画しているところ)。徳島県南部でも、地元産品を使ってこれまでにない新しい食生活の提案を行うことを企画している人がいるが、その話はまたいつか。

 事業所を訪問していてこうした事例に身近に遭遇することが多くなった。共通するのは、ビジネスにお金をかけていないこと(固定費が小さい)、理念が先行していること(儲かるからやるのではなく、やりたい、自分がやらなければ誰がやるという感覚)、地元にあるものを集めて組み合わせていること、ローテクであることである。
 これらは、偶然ではなくビジネスの飛翔のために必然と考えられないだろうか?
  • 固定費が低いことは、変動費(中味)にお金をかけられることを意味する。量産の設備を持たないことから入手が難しい。流通は限られ、欲しい人が多いのだから付加価値が形成され粗利益率の確保が可能。
  • 経営者が開発、生産、販売まで携わり、顧客との接点を持ち、そこから濃密なコミュニティが可能。固定客ができやすい。
  • その製品、サービスを世に問う理由を持っている。モノあまりの時代にモノは売れない。いまや各家庭にないものなどない。価格が安くても必然性を見出せなければ買わない。だから顧客に対し「説得して売る」→「納得して買う」のやりとりが必要だが、それができる。
  • 経営者やそこで働く人たちがやりがいや使命感を持って動いている。そこに会社とスタッフの共感が生まれ、顧客に波及する。
  • 健康や和の雰囲気などLOHAS層、ゆるナビラーが好みそうな要素を持っている。
(「ゆるナビラー」。NHK総合テレビで水曜日23時から放映している番組「ゆるやかナビゲーション」を見る人たち)

 そんなビジネスに対し尊敬の念を込めて、健康粗食ならぬ粗ビジネスと名付けた(実はぼくも粗ビジネスのひとりであるが)。粗ビジネスは、固定費が低くても変動費率が高くなる傾向があり、大儲けは少ないかもしれないがそれでも良い。数人のチームによる年間キャッシュフロー百万円が積み重なれば大きくなるので、小さくても堅実なビジネスを多く持つ企業は強い。なによりも「うちの会社は変わっていける」という実感が持てるので(普通の会社や会議にありがちなことだが、未来の沈没が現場の社員には見えていながら経営者の方針に抵抗できない閉塞感を打破し)働く勇気となる。

 こんなことも考えられる。同一町内の複数の第三セクターや、グループを持つ企業などで、必要なスキルを持つ人を必要としている人たち(チーム)を随時活用できるしくみ。いわば部署横断、(ときには)企業横断のプロジェクトチームとして臨機応変に動かしていく。本体のキャッシュフローがマイナスであっても、たった2人のスタッフによる小さなBtoC部門がプラスのキャッシュフローということもありえる。ただし小さな儲かるビジネスの連合軍とは、根底の理念は同じ方向を向いているはずだ。
 プロジェクトが機能するためには、「儲かることなら何でもやる」ではなく、経営理念をみんなが共有してすみずみに浸透し、「やるべきこと」「やってはいけないこと」が明確となっているシンプルな経営だ。

Copyright(c) 2005 office soratoumi,All Right Reserved