「知らせたいのに、知らせられない〜その2」

 90年代初頭から、消費者物価、企業物価とも低下していることが中小企業庁から報告された。しかもこれだけ長期にわたる物価下落はかつてなかった。それに対する一般的な企業の対応は、まずは価格を下げて数量を確保したが、やがて数量も下落。つまり販売価格も販売量も下降したことが売上減少につながっている。

 「中小企業白書2002年版」(中小企業庁編)を見ると、売上減少に対し「リストラ型」(人員、設備減)で対応した企業は概して芳しくなく、経営革新型(高付加価値化)で対応した企業はその後の経過が良好であることが統計的に示された。

 経営革新とは、「新商品や新技術の開発」のような大きな取り組みもあるが、日々の作業工程の見直し等の小さな活動も経営革新である。企業や商店も新陳代謝がなければ日々老化していくが、若返りのための処方箋が経営革新と理解できる。

 そのためには、「情報収集」→「技術開発」→「情報発信」→「さらなる情報収集」という循環を確立することである。つまり、生活者の声に耳を傾け、それを反映したり解決したりする土俵づくりがひとつの作業とすれば、そこから生活者の潜在ニーズを読みとり、提案、創造して独自の土俵をつくっていくのが2つめの作業であり、この2つは補完しあうものである。

 マーケティングの課題は、「事業者が重視すること」と「生活者が重視すること」が違う場合があって、それを知ることである。
 例えば、中国との価格競争にさらされるタオル業界では、国産タオルは「中国産と比べて危険薬品の使用率が少ない」「生産工程は環境に配慮している」などを重点的にアピールするマークづくりを考えていた。
 ところが生活者を集めたグループインタビューでは、生活者は「色落ちしない」「軽さ」「消臭性」に関心が高かった。このことから、情報発信の中味や商品のプレゼンテーションの方法を再考している。

 グループインタビューは、6〜8人程度の必要とする属性の生活者を集め、いくつかのテーマについて(司会者が仕切ることなく)自由に発言してもらうもので、その際の発言内容はもとより、表情や態度などから深層心理を推し量ろうとするものである。通常は、知りたい課題をピックアップし、それを実証するためのアンケート調査を行うのだが、さらに補完したり別の仮説の検証に当たるのがグループインタビューの手法である。

 これまでいくつかの事業所で行ったが、アンケートではわからない意外な事実が出て驚かされることが少なくない。しかし当事者(当該企業)が主催すれば参加者のホンネが出にくいことから第三者に依頼する必要がある。
 

Copyright(c) 2002 office soratoumi,All Right Reserved