「経営危機に直面したら」


名の通った大手企業がお詫びの記者会見をし、経営破たんする場面が何度か繰り返されたこの十年です。ここから学んだ教訓は、過去の成功パターンをなぞるだけでは没落すること、生活者を欺いたことで傷ついた信用を取り戻すことはできないという教訓です。

しかし経営危機を招く外部要因はほかにもあります。不良債権の発生や競争の激化です。こうして資金繰りが行き詰まり財務内容が悪化すれば経営存続の危機です。どうすればいいでしょうか?

まずは、出血を止めるリストラです。リストラはよく考えて行わないと有力な経営資源を失う、つまり他社と比べての強み(顧客から見た価値=収益の源)を失うことで企業価値が減少し、単なる延命措置に終わることもあります。しかし流入する資金と流出する資金のバランスを取る応急措置を取らなければ出血過多(経営破たん)となります。流入する資金を突然大きくできないので、出て行くお金をカットするしかありません。

そこで役員報酬の減額、人件費の節減、退職者を募る、販管費の削減などを直ちに実行します。ほとんどの企業では気付かぬ間に経費が肥大化しており、非常時ということで大胆にメスを入れれば直ちに経費の10〜30%は削減できるはずです。収益改善策は意外なところにある場合があります。管理手法の変更や社内の風通しを工夫することで痛みを伴うことなく経費を節減できることも少なくありません。

処分できる遊休資産、株式などは、処分損益が出ることで法人税等への影響を考える必要があります。資産を売却することによる営業的なデメリット、つまり風評被害や外注費の増加など競争力の低下も考慮に入れます。しかしそれでも一時的な資金流入が必要なこともあります。

緊急の経費削減で一息ついたら、どの部門を伸ばし、どの部門を中止するかをスタッフを交えて決定します(経営者の頭のなかではリストラと同時にその検討を進めているはずです)。場合によっては創業以来の部門を中止・縮小することも起こるかもしれません。中期的にみれば、独自の土俵をつくることが営業戦略の課題となります。どこにでもある製品、サービスなら価格勝負になるだけだからです。

経費削減はスタッフの志気が低下します。それをはねのけるためには、経営者を中心に次のステップへの道のりを強く描くことです。経営資源の要はヒトです。ヒトの気持ちが上向けば、カネ、モノ、ノウハウ、情報はあとから付いてきます。数字だけで経営革新はできません。

不採算部門を切り捨ててコストを削減し黒字転換したとしても、それを上回る借入金返済があれば資金は回らなくなります。精一杯の自助努力でも足りない部分は、金融機関と交渉して短期資金の追加融資、金利の減免、元本返済の一時的な棚上げ、拘束預金を借入金と相殺するなどの条件変更を求めることになります。そのためには、実現性の高い経営改善計画を作成し、金融機関の支援によって3〜5年程度で再生できることを明らかにする必要があります。

一方の金融機関としては、地域の中小企業金融の再生に向けて、取引先の経営相談、支援機能の強化や創業支援、事業再生の成果を出すことなど(リレーションシップバンキング)を金融庁から求められています。企業としてはメイン銀行とはコミュニケーションを密にし、経営悪化の事態を正確に伝え、それを招いた原因と対策を示すこと、経営責任を明確にして再生に向けてのシナリオを提示するなど真摯な態度で向き合うことで交渉の余地が生まれます。

昨年、企業再生の相談に乗ってくれる機関として、徳島県中小企業再生支援協議会が発足しました。各都道府県に経済産業省の監督のもとに設置された公的な組織で窓口には専門家が常駐しています(相談無料)。「再生」という言葉から風評被害が気になるところですが、相談者の秘密は守られます。5月上旬時点で、すでに再生計画が策定された案件が3件、策定中が5件、相談案件は40と四国内でもトップクラスの実績を誇っています。将来の見通しはあるものの財務上の問題を抱えている企業などは相談されてみてはいかがでしょうか?(経済センタービル内/電話088-626-7121)。



Copyright(c) 2002 office soratoumi,All Right Reserved