経営理念が変わる〜経営革新は日常そのもの

 前々回で紹介した県内のとある事業所。経営理念が生まれ変わろうとしています。この社では、経営理念の重要性を社長からスタッフに至るまでよく理解されており、「まず、理念だね」という雰囲気が濃厚です。しかも会議では、社長や部長の発言にも臆することなく入社数年の社員たちが異議を唱えたり、代替案を言ってみたりするいい雰囲気です。

(現行の経営理念)
1.我々は、顧客と共に感動と満足を持つ
2.我々は、顧客の生活を風雨から守ることが使命である。
3.会社の目的は利益を出すことである。利益を出すことで株主・社員・社会に貢献できる。

 まだ、試案の段階ですが、新しい経営理念の案が上がってきました。
(新しい理念案)
私たちは、くらしを風雨から守る仕事をしています。
それは、トラブルがなくて当たり前の目には見えない仕事です。
安心、安全をお届けしたい。素材の温もり、人の温もりをも伝えたい。
私たちは、地道な作業を日々積み重ねていきます。
お客様のなにげない喜びを創造していくことが私たちの喜び。
お客様とともに成長し、地域に愛される会社になりたいと願っています。

まだ決定稿ではありませんが、当初の理念の精神をよりわかりやすく、いまの時代に語りかける共感を呼ぶものに変わっています。「いい経営理念ができれば、仕事がやりやすくなる」とつぶやいたスタッフの言葉が忘れられません。

経営革新支援法を受けて、この企業はどう変わろうとしているのか。たまたま訪問した夜に見たプロジェクトXがヒントをくれました。それは、瀬戸大橋の建設に携わった一人の技術者の物語です。

 きっかけは、修学旅行の子ども100人が瀬戸内海に消えた紫雲丸の沈没事故。昭和30年に起きた悲劇の事故をきっかけに「瀬戸内海に橋を」が四国の人々の悲願となった。
 瀬戸大橋建設に挑んだのが技術者の杉田秀夫。猛烈な潮流の瀬戸内海に巨大な橋台を建設すべく果敢に挑む。
 技術的な困難を必ず解決できると信じて切り開いてきた矢先、3人の女の子の母親であった妻を胃ガンで亡くした。彼は、同僚や部下に妻の病状を告げることはなかった。
 未曾有の巨大橋を完成させ、番組の最後でテロップが流れる。
 「杉田秀夫は、人生で2つの大きな仕事を成し遂げた。瀬戸大橋と、そして3人の娘を男手ひとつで育て上げた」
 ここで、彼の人生と瀬戸大橋が重なる。それは、瀬戸大橋建設という類例のない巨大なプロジェクトも、子どもを立派に育てあげる人生も、等しく大きなプロジェクトなのだと。

 一般的にプロジェクトといえば、非日常的な特別に設けられた機会です。経営資源を短時間で動かし、目的を遂行しなければなりません。つまりプロジェクトそのものが、(経営)革新のための管理といえます。
 プロジェクトのスタッフに求められるのは、与えられた業務を黙々とこなすだけではなく、自分の目標を追い求める自分自身のプロジェクトでもあるということ。毎日変わらぬ出汁を提供しつづけるうどん店、来る日も来る日も笑顔で接客するデパートガール、春夏秋冬亙を葺くこともみな同じ。決まり切った(ように見える)日常業務をプロジェクトとして捉え、感動を追い求めるところから経営革新が始まると思うのです。

経営革新、人生…それは日常のなかにある感動を探し続けることではないでしょうか。

 なお、県内企業の経営理念の調査についての続報です。経営理念に関する簡単なアンケートにお答えいただいた事業所には、報告書を来年2月頃にお届けします。ふるってご応募ください。詳細はこちら

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