鳴門でウマイ、キレイ、ゲンキ


 鳴門商工会議所が斬新な試みを行っている。鳴門といえば、渦潮のイメージが強いが、「一度みておきたい」けれども「再度来てみたい、滞在したい」という観光地ではないように思われる。

 確かに撫養街道や鳥居龍蔵博士ゆかりの地という歴史的な資産や観光地でない場所ののどかな雰囲気の良さは知られていないし、中心市街地商店街も、これまでの渦潮観光イメージや大型ハードによる観光集客に依存して、自らの工夫で集客するところまでできていないようだ。

 市内には、ワカメ、鳴門ダイなどの海産物、鳴門金時、レンコンのような全国的な農産物がある。さらに全国でもっとも小さい陶芸産地の大谷焼が数年前に伝統的工芸品に指定された。近年では、細麺で出汁になじむ独特の鳴門うどんがブームとなった。赤飯に砂糖をまぶして食べる昔ながらの習慣や金時豆の入ったお好み焼きなど食文化の話題に事欠かない。

市民への提案〜歩いて健康になろうよ

 徳島県は、糖尿病罹患率が全国一となっている。おそらく鳴門も例外ではないだろう。糖尿病罹患率の高さは、運動不足と食生活が要因である。市民生活の現状と健康へのニーズから、市民が健康になるための仕掛けが必要であり、活動に対する参加、共感が期待される。具体的には歩いてもらうこと、地元産の食材を多用しながら健康な食生活の習慣を身に付けることでメタボリック症候群を遠ざけることである。

 こうした課題や特性から商工会議所では「鳴門でキレイ、ウマイ、ゲンキ」と題して次のような事業を実行した。
 これまで焦点を当てられていない鳴門の資源を掘り起こし、磨き上げて提示する。それは、普段の食材を健康的にアレンジした食生活の提案であり、日常の風景を楽しみながら健康になることである。市民の日常生活で親しまれているもの、愛されているものを、市民自らが再発見し、楽しみ、新たな企画開発によって提示することで、これまでにない鳴門の普段着(ハレとケでは「ケ」の部分)の魅力を提示できるのではないかと。

中長期的にめざすのは、「終の棲家創造プロジェクト」

 温暖な気候で京阪神や徳島市にも近くリゾートの鳴門は住みやすい土地であり、団塊の世代退職後の第二の人生、終の棲家として移住してもらえる条件は揃っている。
 大前研一氏の2005年発刊の著書「遊ぶ奴ほどよくデキる」では、鳴門は次のように記述されている。
「(1)気候が温暖、(2)生活費が安い、(3)豊かな自然、充実したリゾート施設など都会生活者が羨む環境が揃っている…という条件に合致する場所を国内に絞って探してみると紀伊半島南部、高知の四万十川周辺、魚のうまい徳島の鳴門、鹿児島県の指宿、長崎鼻などが候補地として最適だ」
鳴門は全国的に「終の棲家」になりうる可能性を秘めている。

できた成果物とは…

 こうした事業の結果、市民や観光客に向けての成果物がつくられた。
(1)鳴門食べ歩き隊 飲食店紹介マップ作成
 鳴門の中心市街地の飲食店マップを市民アンケート等により作成。歩いてエネルギーを消費し、おいしいものを食べて健康をめざすとしている。今回の事業では、いくつかの飲食店が健康にやさしいメニューを開発した。試食後のアンケートでは、「薄味を求めていた」「あっさりしているのにおいしい」「外食といえば脂っこいものばかりだったが、こんな料理なら何度でも食べたい」などと市民の評価は極めて高かった。外食=不健康のイメージを払拭し、家庭が外食を見習うきっかけとなるかもしれない。そうしたヘルシーメニューを提供している飲食店を、本マップでは重点的に表示している。

(2)ウォーキングマップ作成
 市内でウォーキングに適した10のモデルコースを選定して1枚の紙に鳥瞰図のように収録。各コースを連続させると、さらに長いコースにも発展する。しかも市内循環バス、JR等の公共交通の活用で多面的な鳴門を見てJR鳴門駅に戻ることも可能である。
 地図中にはランドマークの記載はもちろん写真もふんだんに散りばめ、見るだけで歩きたくなるようなデザインとなっている。各コースには、鳴門市健康企画室監修により、自分の体重を入力すると消費エネルギーが計算できる工夫が施されている。
 改めて歩いてみると、鳴門は旧街道からリゾート、田園風景、神社仏閣など多面的な風景が連続して現れる。これはこれまでの渦潮鳴門からは想像もつかない鳴門の日常の風景である。多くの市民はそれが当たり前と受け止めているが、単なるリゾートだけでは住んでいて飽きる。歴史や文化、産業を映し出した万華鏡のような多面性、複合性、非日常性と日常の同居が鳴門の風土であることを発見できたことが大きい。

活動やアピールを工夫する

 「当事者が楽しんでできるか」「市民をどう巻き込むか」が課題である。楽しくなければ持続性はなく、持続性がなければ浸透しない。楽しんでいる人たちの輪があって、それを見た外部からどんどん参加したいという流れをめざす。小さな成功体験を分かち合い、その過程を含めて市民へ、そして全国へと情報発信していきたい。
 「鳴門でウマイ!キレイ!ゲンキ」の一部のコンテンツはWeb化されている。 鳴門飲食店紹介マップ作成委員会による「鳴門食べ歩き隊」による飲食店情報や中心市街地の食べ歩きマップ、健康づくりのためのウォーキングマップ、ヘルシーメニュー開発した飲食店のメニュー紹介などもこのWebサイトに掲載されている。「鳴門でウマイ」で検索できる。http://www.naruto-umai.com/



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