「燃える集団、燃えない集団」
 CDやAIBOといったヒット商品の生みの親である土井さん(ソニーの役員)が本を出した。そのなかで「燃える集団」の話に興味を引かれた。

 燃える集団とは、ものごとがどんどんうまく行く。例え困難に直面しても、それを解決する人に運命的に出会ったり偶然に解決策を思いついたりする。全員がこれをやりたい、成し遂げたいと思う気持ちを持ち、困難を次々と乗り越えてしまう。そのような組織はこうである。
  • 行為に集中、没頭している
  • 浮き浮きした高揚感
  • 雑念がほとんどわかない
  • 時間感覚の喪失
  • 自分自身の感覚を喪失している
  • その場を支配している感覚。自分が有能である感覚
  • 周囲の環境との調和感、一体感

 何かをしたいリーダーとそれに共感して集まった人たち。でも周囲の冷たい視線を浴びていたり期待されていない。人材、資金、設備、ノウハウも理想に程遠い。そんなふうに足りない経営資源だけれど、夢を実現させるために、知恵と熱意と創意工夫で未来を切り拓く。この「背伸び」を物語にしたものが「プロジェクトX」である。
 かつて地球は、マイナス50℃の「全球凍結」や隕石衝突で表面温度6千度の灼熱地獄の時代があった。それによって生命のほとんどが死に絶えたが、それでもなんとか生き残った生命がいた。そうした絶望的な苦難を乗り越えることで劇的な進化を遂げるきっかけとなった。危機的な状況がなければ、人類までたどり着かなかったかもしれない。足りない経営資源で困難な壁に立ち向かうことこそ経営革新のきっかけと捉えたい。

 土井さんは報酬には2種類あるという。ひとつは、「外発的報酬」で金銭、名誉等で報いるもの。もうひとつは「内発的報酬」。いかなる報酬も生まない活動に没頭する人たちは、内面からこみ上げる喜びや楽しさを知っているというものである。一般に、仕事は外発的報酬で動機付けされるため、退屈と不満を感じてしまう。遊びは、内発的報酬で動くが、どこか罪の意識を感じることがある。これでいいのだろうか?

 土井さんは失敗したプロジェクトに注目し、その原因を「燃えない集団」となったからという。燃えない集団の条件を以下のように挙げている。
  • 船頭が多すぎる場合
  • 政治で方向が左右される場合
  • 上司が細かいことに口を挟む場合
  • チーム内に不透明な雰囲気がある場合(言いたいことが言えない、親分子分の人間関係が支配的など)
  • プロジェクトの目標に問題がある場合
  • チームを構成する人材に問題がある場合
  • チームのなかに感情のもつれがある場合

 画期的なプロジェクトを成功させるには純粋な動機だ。出世のため名を上げてやろう、金を儲けてやろうとすれば目が曇り、物事の本質が見抜けなくなって失敗する。
 だからアメとムチ(成果主義)の経営では組織が奇跡の飛翔を遂げることはない。仕事そのもののおもしろさや楽しさを奪ってしまうし、ロケットが空に上がるためにはブースターロケット(成功させるために捨て石となる存在)が不可欠なのだが、誰も縁の下の力持ちになりたがらなくなる。

 そうした人を認めることから組織の活性化の第一歩が始まる。その行動をトップダウンで起こすのだ。

参考文献
「運命の法則―「好運の女神」と付き合うための15章

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