「リーダーシップとコーチング」

 日本のオピニオンリーダーを選ぶという新聞企画で東京都知事が1位に選ばれていました。上位にはテレビを通じておなじみの論客やキャスターがずらり。メディアの影響力の大きさを改めて感じます。

 さて、リーダーシップの重要な役割、もしかしてもっとも大切なスキルのひとつに「コーチング」が挙げられます。これは、部下に質問を問いかけることで部下のなかに眠っているであろう答えを部下自らに見つけてもらうものです。
 コーチング理論の発祥の地はアメリカです。そこではリスニングスキルや会議の進行についての専門のコンサルタントが職業として成り立つなど、コミュニケーションの研究が進んでいます。ことコミュニケーションに関しては 、国民や地域によって多少の相違はあっても普遍性を持っていると思われます。このことは、さまざまな国での滞在経験がある人なら同意されるでしょう。

 コーチング理論は、学者の研究ではなく、実践のなかから得られた考察を体系化したものです。それゆえにその理論について疑問を投げかける人がいます。しかしそれはコーチング理論への誤解があるように思います。
 理論というのは手続き通りやれば誰がやっても100%の再現性が得られることだと思いますが、こと人間の感情という複雑なインプットを扱うわけですから、理論の通りに行かないときに理論が間違っているというのは短絡的です。むしろこの理論をどうすれば実践に応用できるかの視点に立てば驚くような結果が得られるはずです。
 コーチング理論は、相手の話を積極的に聞くことに力点が置かれており、問いかけを発してもそれは誘導のための問いかけでないことが前提です。その雰囲気が感じられると部下には「指導されている」というニュアンスが感じられてうまく行かないでしょう。
 
 コーチングを実践にうまく活用できれば、その組織は間違いなく伸びていくと思われます。というのも、徳島にコーチングを実践されていて著しい成果を出している達人がいるからです。
 その人はコーチングという単語さえ知らないのですが、やっていることはコーチングの真髄そのもの。例えば、会議の席ではそれほど雄弁には語りません。発言しても賛成、反対のニュアンスのない問いかけを発していることが多いのですが、最後に意見を求められて話をしたときに説得力があって意見がまとまることが多いのです。
 リーダー的存在だけに多くの人から毎日のように相談が寄せられます。そのすべてに精通しているわけではないのに、こうすればうまく行くというヒントのような会話をしているのです。そして相談者が「あっ、そうか、それでいいんだ」と自ら答えを発見して帰っていく。だからみんなその人のところに相談に行くし、リーダーは問いかけることで自身が正解に近づくことができるのです。それはまさに魔法のコミュニケーション。
 コーチング理論と気付かすすでに実践して誰の目にも成功していると思われる人が徳島にいる以上、この理論の有効性は明らかです。

 東京都知事は人の話を聞く人なのでしょうか? 新しい時代のリーダーシップは決してワンマンでもなければ、その逆に常に円満解決(妥協)を求めて成果が得られない事勿れ主義者でもありません。自身の理念を高く掲げながらも自らは黒子に徹して組織の一人ひとりの潜在能力を引き出すようなアドバイスができ、必要なときにずばっと快刀乱麻を絶つようなカリスマ性を発揮できる人が21世紀のリーダー像だと思います。いかがでしょうか?

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