腕に付けた地球はきょうも廻る

まずは、写真をご覧ください。これが地球型腕時計wn1。Think the Earthプロジェクトの象徴的な製品として企画されたもの。

リストバンドがあるからそうかなと思うけど、腕時計と分かるまで時間がかかる。いったいどこで時を知るんだ。そう思うけど、分かる人は「いま何時何分だ」とすらすらと答える。わからない人は、なぜその時刻なのかわからない。これだけで初対面の人と話の花が咲く。

Think the Earth プロジェクトとは?(以下、インターネットからコンセプトを抜粋)

Think the Earth プロジェクトの基本テーマは
「エコロジーとエコノミーの共存」
ビジネスを通して、社会に貢献する仕組みを提供し
世界中の企業や個人が参加して
ひとりひとりが地球のことを考えるきっかけを作っていくこと
を活動テーマとする 非営利プロジェクトです。

次の世代を担う子どもたちへ美しい地球を残していくために
グローバルな視点をもち、ローカルなひとりひとりの声をつなぐ
インターネットの可能性を最大限に活用して
持続的な地球の未来のための活動を推進していきます。




その最初の製品がこの地球型の腕時計。腕を伸ばして地球の球形を眺めると、月から見た地球の大きさになる。太陽は、258メートル先に置いた直径2.4メートルの球。売上の5%がNGOなどに寄付される。
   

腕時計の地球は1日に1度自転する。ベゼルの素材はチタン。時計本体(コアモジュール)は腕時計から切り離して置き時計として使えるよう段ボール製の紙箱が付属している。ベルトはスポーツなどで使われる新素材ソフィスタ。しかもこれで100メートル防水。リチウム電池は10年の寿命。2001年度グッドデザイン賞受賞。

この製品が象徴的なのは、1日に何度かゆったりとした地球時間を思い出してみようというもの。ぼくはオフの時や講演会などで付けてみたいと思う。それまでは、チタン製のお気に入りの腕時計1個を一心同体のように仕事に遊びに使っている(空と海のホームページの基調色はその腕時計から取っている)。時計なんて何個も要らない。「時を着替えよう」みたいなコピーには踊らされない。

地球腕時計wn1のムーブメントは、さまざまな耐久試験を経てセイコーインスツルメント(株)の盛岡工場で一つひとつ手作業で作られている。ガラスは沼田光器。曲面の精度はレンズと同じぐらい必要らしい。成形に名人芸を要するチタン製のケースは林精機製造(株)。「この小さなカラダに、時を刻む仕掛けがぎっしり組み込まれています。人体の機能の果てしなさに宇宙を感じるように、時計のムーブメントにも内包された宇宙があるよう」と紹介されている。

おそらくは従来の製造ライン、既存部品が使えないのでゼロからの開発である。この腕時計のWeb直販価格は28,000円。これで開発費を回収することは困難だろう。製造原価からは10万円ぐらいの値付けをしたいところではないか。でも3万円でお釣りが来る。そこがいい。地球のことを思うのに金持ちでなければ…なんて状況はそれだけでコンセプトがおかしくなってくる。

政府は国家財政が危機的状況にあるなかで、支出を増やして景気の浮揚を図ろうと躍起になっている。しかし、政府支出というのは全消費の9%しかない。少々増やしたところで,その効果は知れている。では残りの消費は何か。住宅関連が5%,設備投資が19%で,いちばん大きいのが個人消費の57%である。マーケティングをやっている人は是非,こういう基礎的な数字を知っておいてほしい。そうしないと,「景気対策で政府がもっと金を出すべきだ」なんていう的はずれの議論が出てきてしまう(東海大教授 唐津一氏)。

時計はひとつで十分と思うぼくのような人間が買うことは、環境にやさしいを売り物にしたマーケティングに踊らされているという意見もあるだろう。でも企業が夢を追いかけてたっていいじゃないか。いや、夢を追いかけない企業を生活者は支持しない。生活者が全消費の6割を占めている。だから夢のある商品をつくってほしい。夢のある商品を買いたい。

珈琲を飲みながら、しばし腕に付けた時計を眺めるひととき…。腕に付けた地球はきょうもまわっている。


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