身を捨ててこそ〜人生の旅は終わらない
 NHKの番組で「プロジェクトX」というドキュメンタリーがあります。これを見れば、20世紀にどれだけ多くの献身的な努力がこの国を支えてきたのかに思いが及びます。「そんなことは実現するはずがない!」「夢物語はやめろ!」---そんな周囲の冷笑や心ある忠告を受けても挑戦をやめることはできない。まだ誰も信じない未来の萌芽、それがやがて一筋の光に成長していくことを信じて…。
 そんな人たちの献身的な努力がなければこの国は開かれません。不可能に思える遠い道程、くじけそうな結果の連続に生きることが嫌になることもあっただろう日々、スポットライトは当たらなかったけれど、身を捨てて自分との闘いに挑んできた人たちの輝かしい物語です。

 今の時代を見てください。安全な生き方のように見えて、かえって危険な道を選んでいませんか? 誰も予期できない未来、現在の安定は将来の苦難に通じると言い換えてもいいでしょう。企業経営も然り、サラリーマン生活も然り。いえることは、自分を磨くことを一日たりとも怠ることはできないことです。それではどの方向へ向けて努力すればよいか。ときに人間の生き方にまで踏み込んでいくことが日常の仕事レベルにまで求められていると思うのはぼくだけでしょうか?

 単純な作業、例えば、まったく同じ風味の出汁を365日お客様に食べていただくうどん店、来る日も来る日もホテルの清掃を委託されて行う作業員、日常的な案件を滞りなく処理しながらも、地域住民の便宜を考えて自己裁量でできうる最善の処置を行う公務員…。そんな日常の作業のなかに何を見ようとするかが問われているのではないでしょうか?
 言い換えれば、作業を通したその人の良心、社会の秩序を作り出そうとする熱意が透けて見えるような気がします。そんな気持ちは、ヒトという生き物にプログラムされているのだとぼくは信じています。

 経営者のみなさん、経営という現場でヒトに眠る熱意を引き出していますか? それはあなたの無言の後ろ姿を通じてしか伝わりません。そこで働くスタッフのあなた、労働の向こうにある世界が見えていますか? 一度しかない人生に何を見ようとするのか、どんな絵を描きたいのか、それを決めることができるのは経営者でも総理大臣でもなく自分自身です。
 経営が悪いのは景気のせいでしょうか? 暮らしが良くならないのは政治のせいでしょうか? 確かにそれもあるかもしれません。しかし愚痴を言うだけでなく未来に新しい提案を行っているでしょうか? 自ら汗をかいて実践しているでしょうか?無言の良心がひとつの大きな流れとなるとき、時代が音を立てて変わっていくはず。今がその臨界点に達しようとしているのではないでしょうか?
 
 一度きりの人生、何がしたいですか? 一人の人間の存在はちっぽけです。だからこそ、全身全霊でいのちをぶつけて生きてみませんか? 感動のない人生なんてつまらない。そして感動は何気ない日常のなかに存在する。そう問いかけずにはいられないこの頃です。

 そういうぼくも大勢の人々の視線で厳しく吟味されていることを噛みしめながら、終わりのない自分との闘いを日々続けています。自分の生きた証を刻みたいから。

 メッセージをこのWebから世に問いながら実践しています。


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