夏恋花に浸っていたい〜綺羅の「夏恋花」
アルバム全編にさりげなく散りばめられた花と古語。このアルバムは日本人以外ではつくりえないかもしれず、それでいて日本のアーティストがつくっていない音楽かも。しかし古(いにしえ)ゆえの物珍しさでない。シンプルなアレンジだが隠し味が絶妙。力任せのヴォーカルアルバムではないが、漂うような歌声が琴線に触れる。

夏恋花」の美しさ…。もっと浸っていたい、いつまでも浸っていたい…それなのにわずか3分36秒で終わってしまう…。誰の胸にもある夏の静かな叙情が立ちこめ、包まれ、抱かれ、ただ浸る。

ゆるりゆるりらら…。やみよやみよよ…。日本語の美しいヤ行の音が耳に残る。源氏物語五十四帖に思いをはせる人もいるだろう。うつせみにぽっかり空いた落とし穴にはまったような感覚。ぼくはこの音楽の余韻が好きだ。

綺羅」は、バックコーラスや他のアーティストに作品提供などの活動を20年以上続けてきた広谷順子さんと木戸やすひろさんの2人のユニット。アルバム「夏恋花」(2002年6月26日発売)がデビュー作。タイトル曲「夏恋花」は、2002年6月〜7月のNHKみんなのうたのオンエア曲。矢島マキさんの秀逸なプロデュース。
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[収録曲] さくら / 陽だまり / 夏恋花 / 雪月花 春 / 兆し / 闇よ闇夜よ
          雪月花 秋 /春の七草 秋の七草 覚え歌 / 楽園の雪 / 華の夜