昨日と違う今日、今日と違う明日
「ものにしたいという研究の卵を三つか四つ抱えておくように。運が回ってくれば、どれかが鳥になって飛び立つこともある」。2002年10月8日、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの言葉である。 小柴さんはこうも言う。「日本では本に書いてあることを覚えて理解するというのが多いが、教科書に書いてあることがほんとうかいなとひっくり返すのがおもしろい」。 次の言葉も好きだ。「科学の世界には、偶然の幸運は周到に準備された実験室で起こるという格言がある」。いつかはきっと夢が叶うと信じて地道な作業を継続しようと思える資質こそ大切なんだ。 ぼくの資質は、楽観性に裏打ちされた人生肯定的な考え方と、散策するような知的な遊びが好き。そして心に浮かび上がるものをカタチにしたいと思う。それを構成している能力は、洞察力、表現力、創造力。わかりやすく言うと、「感じること、表現すること、行動すること」で、それを名刺に載せている。それらの能力を組み合わせて、「経営コンサルティング」「小説を書く」「写真を撮る」「音楽を聴く」「自然で遊ぶこと」を楽しんでいる。楽しもうと思っているのではない、ただ過程が楽しいのだ。 ぼくは自然科学や芸術、文学など多様な世界を彷徨った。それらは直感が求められる。汲めども尽きることのない泉を胸のうちに持っているような感覚にも似ている(もちろんこの文章も一気呵成に数分で書き上げている)。問題点を聞いている、現場に立っている、そうするうちに、ぱっとひらめくことがある。 ぼくはそれを「匂い」と表現している。売上高が伸びない企業の決算書を見て「同業他社に比べて売上高広告宣伝費が少ない。だから広告費を増やせ」などと短絡的な分析はしない。 たいていは、問題点を脳のファイルに置いたままで「熟成させる」。そうするうちに、絡み合った糸が解けて原因と結果が結びつくようになってくる。それは、数日のこともあれば数ヶ月のこともある。だけど、社内で数年かけて解決できない問題を意外な方法で道を拓くことを提言できることもある。 そんな目に見えない無形のソフトの価値をいかに納得していただくかが悩みといえば悩みだ。モノが中心の世界観にどっぷり浸かった20世紀だから、目に見えないノウハウやそれがもたらす成果が見えにくくなっているのかもしれない。 経営というのは、原因があって結果があるという因果応報の世界だ。これは何事も同じだろう。その流れを感じて糸を解きほぐしていく。それをわかりやすく単純化して提示し、実践に当たっては人の心を掴み、ともに進めていくという「人の話を聴く姿勢=共感力」がコンサルタントの大切な資質となる。 何事も強い信念があれば果実に結びつくというのはぼくの自然体の人生観だ。裏を返せばどんなことがあってもその過程を楽しもうと思っている。 最終学歴は、普通科の高校をほとんど末席に近い成績で卒業しているぼくであるが、英語能力は、かつて進学校の生徒を塾で教えたたり、翻訳のアルバイトをしていた程度である。それをどのように会得したかといえば、1日1時間の勉強(独学)を1日も休むことなく7年間続けただけ。やっていくうちに、できるだけ合理的な方法、楽しめるやりかたを探し出した。 それは、楽しくて費用はほとんどかからない。負担にならないばかりか励みにさえなるという優れた方法である。これによって「やればできる」というシンプルな原理をぼくは発見したが、ノーベル賞はむずかしいかもしれない。このメソッドについてはいずれ紹介しようと思う。 自分の人生は自分で決める、ただ信じて歩くだけ。だけど、昨日と違う今日、今日と違う明日がきっとある。 ▲戻る |