アミノ酸飲料の比較と感想〜あくまで「食」が主だが、テフロン加工のような肌になって驚いた
アミノ酸飲料がブームになっているが、代表的な製品を集め、Webサイトを通じて情報を集めてみた。

まずは、店頭でよく見かける3つの商品について、含まれるアミノ酸の種類と分量を拾ってみた。数値は、100ml中のmgである(500cc なら5倍すればよい)。

バリン ロイシン イソロイシン リジン アスパラギン酸 アルギニン グルタミン酸 プロリン アラニン 合計
アミノサプリ 4 4 4 40 60 58 10 20 200
燃焼系アミノ式 95 60 20 20 5 200
アミノバリュー 100 200 100 100 500

アミノ酸以外の主な成分についても拾ってみた。参考までに「ポカリスエット」を加えてある。これも単位はmgである。
カルシウム マグネシウム カリウム ナトリウム エネルギー
アミノサプリ 44 24kcal
燃焼系アミノ式 7 2 26 28 19kcal
アミノバリュー 49 19kcal
ポカリスエット 2 0.6 20 49 27kcal

単純にみれば、アミノバリューが総量が多いが、アミノ酸の種類は少ない。

また、アミノ酸以外の要素も気になる。このところ減塩が注目されているが、食塩の摂取量として、厚生労働省では1日10gが上限という目安がある。これは上限であって、高血圧など減塩が求められる人なら1日7グラム以下に抑える必要がある。もっとも人間が一日に必要な塩分は1.3g程度、ナトリウムに換算して500mg程度だ。ところが調味料を使わずとも、一日3食を食べればナトリウムだけで数グラムに達すると考えられる(ナトリウムと食塩の表示が混在しているが、ナトリウムを2.5倍すると食塩表示となる)。体内浸透性を考えたのかもしれないが、減塩を求められる人には各社飲料ともナトリウムは少ないとはいえない。飲み過ぎると、ナトリウムを摂りすぎる心配がある。

ここで各社の言い分をそれぞれのWebサイトから拾ってみた。

[アミノサプリ](キリン)


[燃焼系アミノ式](サントリー)


[アミノバリュー](大塚製薬)

大塚は、サイトの情報量がもっとも多い。さらに抜粋してみよう。


これをみると、BCCAに関しては、ごく普通の食事する限り不足する心配はなさそうに思える。ビタミン、ミネラルもそうだが、サプリメントはあくまで栄養補助食品であり、口から摂る食事が基本である。大量摂取で症状を好転させるという使い方は、医師などが特定の治療目的で行うことはあっても、日常的に行う必要はない。

サイトの情報量では、各社でかなりの差が出た。特にキリンは判断の材料となるような情報は少ない。
サントリーは先駆者として巧みなマーケティングが光る。子どもを足で回す曲芸のようなCMが話題となり、しかも「燃焼系アミノ式」というネーミングもひっかかるところが秀逸である。医薬品ではないので効能はうたえないが、「ダイエットにききそうだ、脂肪が燃えそうだ」というイメージ(錯覚)をおぼえさせるという点でマーケティング的には成功だ。しかしユーザーは飲んだだけで痩せると騙されたような、すっきりしない気がする。

どこかのテレビ局の番組アンケートでは、アミノ酸飲料ではダイエットは実感できないという回答が大多数であった。実際にアミノ酸飲料を飲んだだけではダイエットは成功しない。正しくは、運動直前に飲んで30分以上の有酸素運動を行うことが不可欠。飲んだだけではダイエット効果はなしという点を押さえておきたい。

あくまで個人的な感想であるが、「アミノサプリ」と「燃焼式アミノ式」は、アミノ酸をバランスよく含む点を訴えているようだが、アミノ酸の総量が少ない。アミノ酸が多い食品を食べるほうがより効果的だろうと思わせる。

後発の「アミノバリュー」は、特定のアミノ酸に絞り、疲労回復を主として打ち出したものだ。冷やして飲むとオレンジジュースのようだ。ただナトリウムが他社よりやや高めなので減塩をめざす人が常飲するのはどうかと思う。しかし同社のポカリスエットと同様、身体に吸収されるような電解質バランスなので、疲れたときはポカリスエットよりもアミノバリューがいいだろう。栄養ドリンク代わりに飲むこともできるだろうが、栄養ドリンクと違ってカフェインを含まないので内臓に負担がなく、また覚醒したあとの倦怠感という副作用がない。しかも30分ぐらいの短時間で効果が実感できるはずだ。

実はアミノ酸飲料ではなく、F社のアミノ酸のサプリメントを食べ始めた。その1粒当たりのアミノ酸含有量は次の通り。やはり錠剤だけあって、アミノ酸をバランスよく含んでいるし、この表には掲載されていないが、飲料系と違ってナトリウムもほとんど含まれない。減塩を重視する場合、カロリーを控えたい場合、継続して飲む場合は、摂りたい栄養素以外は摂らなくてすむ錠剤が有利だ。


一般的に、それぞれのアミノ酸の効用は次のように言われている。
  • 疲労回復には、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン
  • 美容には、プロリン、アルギニン
  • 脂肪を燃やす(有酸素運動が前提)には、リジン、プロリン、アラニン、アルギニン
  • 脳の活性化には、チロシン、トリプトファン
  • 肝臓の保護には、アラニン、グルタミン
  • 免疫力を高めるには、グルタミン、アルギニン
飲料メーカー3社と錠剤メーカー1社を比較したのが次表である。この会社の錠剤は5〜15粒が目安と記述されているので3つのデータを拾った。


やはり常用するには、飲料系よりは、錠剤系が良さそうである。しかし飲料系も、スポーツの前に、クルマを運転しながら、喉の渇きに、風邪をひいたときの水分補給などの用途が考えられるため、無意味とはいえない。飲料系で選ぶなら、ぼくならアミノバリューにする。成分とその効能、含有量からすれば、疲労回復には効果がありそうだ。慣れてしまえば、風味はそれほど抵抗なく、むしろ柑橘系の酸っぱさを好むぼくのような人間には、ほかの2つよりもすんなりと口に入ってくる。

さて、アミノ酸を摂取しはじめて2日目となった。ところが、肌がすべすべとしていることに気付いた。気のせいという次元ではなく、首筋、指先、手の甲、腕、腹…どこを触っても、スケートリンクのように指が滑っていく感じ。こんな表現が許されるのなら、肌にテフロン加工をしたかのよう。テニスのラケットを持つと、滑ってしまうと思わせるほどだ(大げさではない)。実はうちの母親にも飲ませたところ、てきめん肌のすべすべ感を指摘した。それぞれ飲んだのは、錠剤を5粒だけ。アミノ酸は効果がわかりやすいサプリメントだ。ただしあまりにサプリメントに依存する生活は楽しくない。あくまで助力(サポート)にとどめておきたい。

以上は、生まれてから一度もタバコを吸ったことがなく、比較的きれいな空気の職場でいて、野菜やミネラルを食事からふんだんに採っているぼくの体験である。食事が不摂生で、タバコを吸い、化学調味料系の濃い味付け、偏った食生活の人にはアミノ酸(というかサプリメント)はきかないかもしれない。

繰り返すが、あくまで基本は「食」にある。主役は食べることであって、アミノ酸飲料やサプリメントは「従」である。それを踏まえたうえで、アミノ酸と上手に付き合っていくのも悪くないと思った。


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